田崎正巳のモンゴル徒然日記

2022/07/09(土)01:16

安倍さんの訃報をモンゴルで聞くとは!!

日本とモンゴル(文化・交流)(359)

今、モンゴルにいます。コロナ前の2019年12月以来、3年ぶりのモンゴルです。 成田でチェックインをしていた時に、「安倍元首相襲われる」とのニュースを目にしました。「襲われる」という表現は政治家には時々あることなので、変な奴が襲おうとしたけど、SPがそれをよけて守ったのだろう、くらいにしか思いませんでした。 ところが、飛行機に乗る直前のニュースは「銃で撃たれ、心肺停止」「病院に運ばれた」とありました。そしてウランバートルの新空港に着いたら「死亡」とのニュースが。本当に驚きました。 首相を襲うなんて、戦前の515事件か226事件かと思いました。背後関係はもちろんわかりませんが、元自衛官だとのニュースを見て、本当に戦前みたいだなとも思えてきます。 ウランバートルのホテルにチェックインした時、受付の女性が「今日は大変な日ですね。」と声をかけてきました。何があるのかなと聞くと「日本の元首相が亡くなりました。」と手で涙をぬぐうようにして「私は泣きました。」と言いました。 自民党や安倍さんの長期政権には飽き飽きしていた人たちからすると、恐らく想像もできないでしょうが、安倍さんはここモンゴルでは大変人気があります。「ありました」ではなく、今もあるのです。スガやキシダは知らなくても、安倍さんを知らないモンゴル人はほとんどいないと言ってもいいでしょう。 その訃報は、あっという間にモンゴル中に広まり、誰もがひどく悲しんでいます。もしかして、日本人よりも悲しんでいるのではないかと思うほどです。 恐らくですが、日本人の場合は、「選挙中の襲撃」「テロ行為」「民主主義を揺るがす行為」など、その許されざる行為に対しての怒り、悲しみがメインだと思いますが、ここモンゴルでは完全に、安倍さんの死、外国人政治家として人気があった「シンゾー」が亡くなったことへの悲しみがとても強いのです。 モンゴル外務省の人たちも大いに悲しんでいるそうです。モンゴル外務省には安倍さんと直接会ったことがある人が結構多いのです。それはなぜか? 安倍さんは3度もモンゴルを訪問し、何度もモンゴルの大統領や首相に日本で会っています。恐らくモンゴルの首脳(大統領、首相)が最も多く会った外国の首脳は安倍さんだと思います。なので、外務省の官僚たちはその随行員としてや通訳として、安倍さんと会う機会が多かったのです。そして個人的に政治家として好きになっている人が多いのです。 エルベグドルジ大統領とモンゴルで首脳会談 しかもそれだけではないのです。安倍さんの私邸は渋谷の富ヶ谷にありますが、モンゴル大使館もその近所です。安倍さんは散歩の途中に大使館に寄ったり、大使館に手を振ったりしていたそうです。日本大使館はモンゴルの在外大使館の中でも重要な拠点ですから、外務省の官僚もよく知っているのです。 更にもっと驚くべき交流が! それはゴッドマザーです。安倍さんのお母さん安倍洋子さんは、政界のゴッドマザーとして有名ですが、彼女はモンゴル大使館にしょっちゅう遊びに来ていたそうです。年に数回というレベルではなく、月に数回、時には毎週ということもあったそうです。どうやらお母さんもモンゴルが好きだったようです。 安倍さんのみならず、お母さんもモンゴルに来ていたのです。お母さんは書道家でもあり、モンゴルで「日本モンゴル書道展」を2014年に開いた時、モンゴルへ来たのです! モンゴルでの書道展で挨拶をする安倍洋子さん もちろん、日本がモンゴルへの最大援助国ということも、モンゴル人に人気があった理由でもあるでしょう。私がはっきり覚えているのは、新空港建設のことです。新空港建設案についてはかなり前からあり、私がモンゴルにいたころから既にODA供与は決まっていました。 が、その後建設業者をどうするかなど紆余曲折があり、なかなか決まりませんでした。しかも建設予算が決定的に足りなくなり、その事業そのものを手掛けようという日本企業もほとんど消えてしまったのです。実際、400億円近いODA枠に対して、建設費が100~200億円くらい足りないという話も出てきて、頓挫してしまったのです。 日本側は「約束のODAは出すんだから、後はモンゴル側で進めてくれ」と言うし、モンゴル側は「そもそもお金が全然足りなくて着工もできない」となります。役人レベルでは膠着していた時に安倍さんがモンゴルにやってきて「エイヤ!」かどうかは知りませんが、「必要な資金は日本政府が出す」とエルベグドルジ大統領に約束して、昨年完成したのです。 空港 これが新空港です。 今日初めて見ましたが、綺麗で近代的な空港です。今後のモンゴルの発展のカギを握る存在になるでしょう。 安倍さんの死を悲しんでいるのは、首都ウランバートルの人たちだけではありません。安倍さんはモンゴルでは田舎でも大人気でした。モンゴルはファーストネームで呼ぶ習慣があるので、私は何度も「シンゾー」と言うのを耳にしました。その田舎の人たちも、今日の事件には大変悲しんでいるとのことです。 再度申し上げます。日本の方からするとちょっと想像できないほど、安倍さんは人気者です。なのでその分、今回の悲劇には大きな悲しみを多くの一般庶民のモンゴル人が抱いてくれているのです。ありがたいことだと思います。 合掌

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