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2015.03.01
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テーマ:ギリシャ(35)
カテゴリ:古代ギリシア
「古代ギリシア人で最も卓越した人物は誰か?」と問われた時に、思い浮かぶ人物は数名ほどいます。テルモピュライの戦いで祖国のために英雄的な死を遂げたレオニダス1世、サラミスの海戦を勝利に導いた将軍テミストクレス、民主政を樹立したペリクレス、斜線陣で無敵のスパルタ軍を破った将軍エパメイノンダス・・・。個人的にはレオニダス1世を推したいですが、主観を排し、客観的にこの質問に答える場合は、これに該当する人物は「彼」を除いて他にいないでしょう。
そう、アレクサンドロス大王です。

Alexander the Great.jpg

ローマ最大の敵ハンニバルや皇帝ナポレオンでさえアレクサンドロス大王を崇拝していましたし、事績の規模は他の追随を許しません。紀元前であるというのに、10年足らずで西はギリシアから東はインドまでの大帝国を築き上げたのですから。しかも敗北は一切経験せず、指揮を執りながらも最前線で戦い、尽く勝利を掴み取ってきました。古代ギリシアという括りを取っても、アレクサンドロス大王に比肩する人物はそうはいないでしょう。言わば彼は、全世界を代表する大英雄なのです。


というわけで、フラウィオス・アッリアノス著の『アレクサンドロス大王東征記』を紹介します。この本を読むだけでアレクサンドロス大王の成し遂げた多くのことを知ることができるので、歴史好きならば是非読むべきでしょう。内容はかなり濃く、決して飽きませんし、めっちゃ面白いです!無論、二世紀頃に書かれた書物ですので、難解な部分が多々あり、現代小説のようにスラスラと読むことはできませんがね。笑


この本を読み終えて、なんとなく分かっているつもりだったアレクサンドロス大王の凄さを再認識しました。彼の凄さを一言で言い表すなら、超チャレンジ精神!未知なることや困難なことに次々と挑戦していくことが彼の強さです。インドまで及ぶ東征も、まだ誰も見たことのない「世界の果て」を目指してのことでしたし、帰路の砂漠横断も、極めて困難なことだと伝えられていたから、敢えて挑戦していました。大王は征服者ですが、それは副産物に過ぎず、とにかく挑戦しまくり、未知の領域を冒険することこそが、彼の第一の目的でした。


その超チャレンジ精神の源泉は、類い稀なる名誉欲でしょう。大王は神話上の英雄と張り合う癖があり、アキレウスやヘラクレスのようになりたい、彼らを超えたいと常日頃から願っていました。彼らを超えるには偉業が必要であり、その偉業とは、まだ誰も達成したことがないこと(=未知)や困難なことを達成することです。大帝国の樹立もそのための手段に過ぎず、マケドニア王国の領土拡張及び繁栄という目的など、一ミリもありません。あるのは、神話の英雄たちに匹敵するほどの名誉が欲しいという個人的な願望だけでした。


アレクサンドロス大王の驚異的な点は、その無謀とも言える願望を叶えさせるだけの実力があったことです。戦術の天才であり、鍛え抜かれた精鋭騎兵でもあった彼は、ペルシア軍の重圧をものともせずに打ち破り、ペルシア帝国を滅亡に追い込みます。「鉄床戦術」と呼ばれる重装歩兵・重装騎兵・軽装歩兵の連携プレーにより、自軍の何倍もの敵軍を敗走させたのです。しかも、敵のホームグラウンドで。


当時、地球は円盤状で、中国やアメリカはまだ認知されておらず、イベリア半島からインド付近までが全世界とされていました。その大半を支配するペルシア帝国は、ギリシアにとって全アジアを統べる「世界の中心」であり、それを征服することは世界の半分を制圧することに等しい非現実的な大事業でした。確かに、古代ギリシア人たちは重装歩兵による密集方陣がペルシア帝国に有効であることを見抜いていました(ギリシア傭兵部隊は、エジプトやペルシアで精鋭部隊として重宝されていた)が、帝国全土を征服することは、局地的な戦闘でペルシアを破るのとはわけが違うのです。


よくアレクサンドロス大王の功績を「ペルシア帝国の領土をまるまるもらっただけ」と矮小化しようとする輩がいますが、その方は何にも分かっていません。ペルシア帝国はアジアのあらゆる国家の集合体でもあり、帝国軍を倒したところで、何百もの国々や集落が残ります。事実、アレクサンドロス軍はペルシア帝国討伐後も、土着的な民族との戦闘を幾度となく繰り広げます。攻城戦やゲリラ戦、未知の装備や戦法で苦しむこともありました。しかし、重装歩兵や騎兵を上手く活用し、アレクサンドロス大王はその全てで勝利を収めました。平地最強と謳われる遊牧民に対しても、その場で対策を練り、有効な部隊を即座に編成することで、勝利を掴み取りました。冷静かつ迅速な判断、柔軟な思考力、そして失敗を恐れぬ大胆さや果断さこそ、アレクサンドロス大王が「世界の半分」を制圧できた所以なのです。


ある時は難攻不落の砦を攻略し、ある時は「絶対に踏破できない荒れ地」を踏破して敵軍を驚かせ、ある時は数百頭からなる戦象の大部隊を打ち破る・・・この本を読めば、アレクサンドロス大王の凄さが直に分かることでしょう。ただ、その基盤を整えたのは父フィリッポス二世であり、そのことを忘れてはいけませんがね。


『アレクサンドロス大王東征記』には、上記の戦術面での凄さ以外にも、多くの魅力が詰まっています。異民族との融和を推進するアレクサンドロス大王とギリシア中心主義から抜け出せないマケドニア軍との軋轢、酔った勢いで忠実な部下を殺してしまった大王の嘆きなど、見所は盛り沢山です!歴史好きな方は、是非読んでみましょう!





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Last updated  2015.03.01 20:52:12
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