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2017.02.12
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カテゴリ:古代ギリシア
最近、寒い日が続いていますね。私は寒さが苦手なので早く春になってほしいんですが、未だに雪がぱらぱら降ってくるので、暖かい春はまだ先のようです・・・。
そんな寒い日は暖房をつけて部屋でまったり読書に限ります!というわけで、最近読み終わった本二冊、クセノポンの『ギリシア史』アリストパネスの『ギリシア喜劇』を紹介したいと思います。どちらも非常に興味深く、楽しく読める作品でした!


■クセノポン『ギリシア史1』『ギリシア史2』
ペロポネソス戦争の終盤と、それに続くコリントス戦争、そしてテーバイの台頭について詳述されている歴史書がクセノポンの『Ελληνικα(ヘレーニカ:ギリシア史)』です。
トュキュディデスの書いた『戦史』には、ペロポネソス戦争の終結までは書かれておらず、スパルタの勝利を決定づけた名高い「アイゴスポタモイの海戦」も勿論収録されていませんでした。トュキュディデスは何らかの理由でペロポネソス戦争終結まで書き終えることができなかった(構想自体はあった)というのが通説です。
そのトュキュディデスの無念を晴らしたのが、クセノポンというわけです。(クセノポンがトュキュディデスを意識して執筆したかどうかは、研究者によって見解の分かれるところですが)

クセノポンはソクラテスの弟子であり、『アナバシス』においては、一万人のギリシア傭兵を束ね、敵だらけのアジアを6000kmも横断し、ギリシアに帰還するという偉業を成し遂げた名指揮官でもあります。また、アテナイ人でありながらスパルタ贔屓としても有名で、スパルタの国制やスパルタ王アゲシラオス2世を絶賛する書物も著しています。当時、アゲシラオス2世は全アジアを征服せんという野望を抱いていたので、そのリーダーシップに惚れ込んだのでしょう。

『ギリシア史1』『ギリシア史2』の最大の魅力は、クセノポンが惚れ込んだアゲシラオス2世の軌跡だと思います。
彼はスパルタの隆盛と凋落、両方を同時に味わった王でもあります。アイゴスポタモイの海戦の立役者であるリュサンドロスの支援を得て王位を継ぎ、小アジアに渡ってペルシア帝国サルディス太守のティッサペルネスを圧倒。ペルシア帝国征服の野望も滾らせていましたが、ギリシア本土でコリントス戦争が勃発するにあたって帰還。コリントス戦争には無事勝利(スパルタ優位な条件で和平実現)しますが、テーバイのエパメイノンダスがレウクトラの戦いでスパルタ軍を破り(ちなみに、この時の指揮官はアゲシラオスではなく、クレオンブトロスでした)、スパルタの天下は終焉を迎えてしまいます。テーバイはアルカディア同盟と連携してスパルタに攻め入り、スパルタは宿敵だったアテナイと手を結ばざるを得ない状況になってしまうのです。

アゲシラオスは「スパルタの王」と聞いて思い浮かべるような(映画『300 スリーハンドレッド』のレオニダスのような)筋骨隆々な体型ではなく、小柄で片足が不自由だったという伝承が残っています。しかし、性格は誠実かつ謙虚であり、優れた知略でスパルタの最盛期を築き上げ、もしかしたらアジア全土を征服していたかもしれないほどの名将でもあったのです。彼の軌跡を歴史の内に辿ることができるのが、『ギリシア史』を買ってよかったと思えた一番の理由です。


■アリストパネス『ギリシア喜劇1』『ギリシア喜劇2』
悲劇に関しては、アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスの現存作品は全て読んだことがありますが、喜劇に関しては全く手つかずだったので、思い切って購入してみました。『ギリシア喜劇』の1と2には、アリストパネスの現存作品全てが収録されています。早速一読してみると、悲劇とは似ても似つかぬ作品群であることに気が付きました。

まず下ネタが非常に多いですね。俳優の股間に男根の模型をくっつけて登場させるほど露骨でした。解説が豊富なので、喜劇を読んでから、古代ギリシアの性事情に詳しくなりました。笑 
例えば、古代ギリシアの婦人は下の毛を剃ることがお洒落だったとか、「仔豚」は女性のあそこの隠語だとか、子無しの妻が他所から赤ん坊をもらって自分で生んだふりをするとか・・・。
そこには叙事詩や歴史書には決して書かれていない、生々しい古代ギリシアのリアルが広がっていました。

政治を痛烈に批判しているのも喜劇の魅力の一つです。古喜劇は風刺が激烈であったことで知られており、面白おかしく下ネタの衣を被ってはいますが、その裏には凄惨な歴史の真実が隠されています。当時、アリストパネスの生きたアテナイはペロポネソス戦争期であり、絶対的なリーダーだったペリクレスの死後、扇動政治家デマゴーゴスによる人気取り政治の影響で、アテナイは混乱に陥っていました。政治家は国のことを真剣に考えずに目先の人気ばかりを追い、市民たちはそんな政治家に振り回され、現実離れした過激な思想が民会で跳躍跋扈していました。
こんな現状を憂い、純粋に古き良きアテナイと平和を追い求めたのが、アリストパネスでした。彼の作品には、主戦派のクレオンや、新しい思想を持ち込んだソクラテス(彼の中では、ソクラテスはデマゴーゴスの一派でした)、人気取り政治に惑わされる市民たちを痛烈に批判する内容のものがあります。特にクレオンへの批判は激しく(彼は主戦派であることに加え、民会の日当を市民の支持率を得るためだけに1オボロスから3オボロスに引き上げたりするなど、デマゴーグの典型でした)、彼がどれだけ戦争を嫌っていたかが分かります。

アリストパネスの想いは、現代社会においても共感できるほど、普遍的なものです。信念などなく、人気取りのために過激な発言を繰り返す政治家は、現代社会においても蔓延っています。アリストパネスはまた、戦争をビジネスチャンスと捉える商人(武具商人など)も皮肉っていますが、現代においても戦争は「特需」になりかねません。
彼の作品を読めば、政治や戦争に付き纏う問題が、何千年の時を経ても解決できなかったことに気付くでしょう。だからこそ、アリストパネスは平和を賛美し、平和こそ幸福と信じて、それを追い求めていたのです。





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Last updated  2017.02.12 16:21:14
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