リュンポリス

2017/11/05(日)00:10

これはホラーじゃなく青春映画『IT/イット "それ"が見えたら、終わり。』

映画(83)

​​​​​​​あの『エクソシスト』を抜き去り、歴代ホラー映画史上No.1の大ヒット作となった​『IT/イット "それ"が見えたら、終わり。』​を早速観に行ってきました!ホラー作家の巨匠スティーヴン・キングが原作というのもあり、日本公開を今か今かと待ちわびていました。(彼が原作の映画としては『シャイニング』が非常に怖かった記憶があります)まぁ、スティーブン・キングの小説は一冊も読んだことがないんですけどね。笑 ※ネタバレ注意! ■"それ"が見えても、終わらない。 副題にもなっている「"それ"が見えたら、終わり」ですが、実際は​それが見えても全然終わりませんでした。​笑 というのも、主要メンバーは全員生存で、ITに殺される描写があるのも冒頭のジョージーと不良の2人だけ。何度か「あ、さすがに死んだな」というピンチはあったものの、結局大事には至らず、なかなかしぶとく生き残る。ITによって惨たらしく殺されていくパニック系映画を想像していたので(ITが牙を剥きだした瞬間に「あ、これモンスターパニック系だ!」とワクワクしたものですが…笑)、これにはちょっと驚きです。ITが見せる幻覚はなかなか恐ろしいものがありましたが、毎回ピエロがテンション高めなので、むしろ笑える場面も少々ありました。 それで、途中から気付きました。この映画はホラーじゃないな、と。少年たちと少女が、それぞれにそれぞれの問題を抱え、葛藤する――まさしくこれは青春映画です。 ITよりも怖かったのが、主人公たちを取り巻く現実の環境です。過保護な母親に偽薬を飲まされてたり、過激ないじめが横行していたり、父親に性的虐待を受けていたり・・・。閉塞的すぎる現実の空間こそが、ホラーでした。 ITに襲われた時の方が、少年たちは生き生きしていたように思えます。ITと立ち向かう時だけ、少年たちは結束し、現実を忘れ、勇気を胸に行動できたのですから。夏休み中の出来事ということも相まって、ITと戦ったことは、少年たちが現実から目を背けるための一種の逃避行だったんじゃないかとさえ思えてきます。ジョージーも、ITに喰われたのではなく、ただの事故死で、それに納得できないビルが作り出した妄想だったのではないかと・・・。 上記からするに、ITは大人が子供に押し付けてくる身勝手さを象徴しているのではないでしょうか。ITと対峙することを通して、少年たちは自立することができたのですから。 ■ITの正体 とはいえ、ITによって大勢の人が失踪しているわけですから、「大人の身勝手さ」を象徴しているにしても、作中では(少年たちの妄想ではなく)確固たる怪物なのでしょう。では、一体ITとは何者なんでしょうか。 ITは自分のことを「ペニー・ワイズ」と名乗っています。ここから、ITは元々は人間だったということも考えられます。ITのピエロは、​ジョン・ゲイシーという実在の殺人鬼(ピエロに扮し、数十人もの少年たちを誘拐・殺害した)がモデルになっている​ことを考慮すると、元人間説(悪霊説)も現実味を帯びてきます。 しかし、90年代版の映画では、ITの正体は邪悪な巨大蜘蛛で、人間の魂を貪りくっていたそうです。確かに、犠牲者が空中に浮いている様は、蜘蛛の巣に絡み取られたかのような光景でした。人の恐怖を喰らい成長する(まるで『学校の怪談』の天邪鬼のような特性ですね)古きから地下に住まう悪魔のような存在なのかもしれませんね。出現前に電灯が点滅するのも、(海外ドラマ『スーパーナチュラル』的に)悪魔っぽい演出でした。 ただ、今作のITが攻撃された時に出る血しぶきは、フワフワと宙に浮いており、まるで水の中にいるかのようでした。ここからすると、巨大蜘蛛よりも水棲生物・地下水に住まう怪物という可能性もありますね。 今回は、少年たちとITのひと夏の冒険でしたが、第二章では大人になった彼らとITとの決戦が見られるそうなので、ITの正体は続編で明らかになるでしょうね。第二章は2019年に公開予定です。どんな結末になるか、今から楽しみです!​​​​​​​

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