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土曜日の書斎 別室

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血盟団事件

昭和史断章  太平洋戦争への道




血盟団事件




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  傀儡国家 ・ 満洲国建設の陰謀が、 関東軍の手で進められていた同時期・・・。
  日本国内では、 軍部 ・ 反動団体によるクーデター未遂が相次ぎ、 白色テロルが横行し始めていた。

  1932 (昭和7) 年2月9日。
  前蔵相 ・ 井上準之介 は、 民政党議員の応援演説に訪れた小学校 (東京市内本郷) の正門前にて、 待ち伏せていた暗殺者 ・ 小沼正に拳銃を擬せられ、 射殺された。
  一人一殺を叫ぶ 血盟団 による最初の兇行であった。

  同年3月5日。
  三井財閥の総帥的地位に在る 団琢磨 は、 日本橋本社ビル玄関前で、 同じく暗殺者 ・ 菱沼五郎に狙撃され、 死亡した。
  血盟団二度目の兇行であった。

  日成らずして、 首領 ・ 井上日召 以下の血盟団一味は検挙され、 暗殺計画の全容が判明したが、 それによると・・・。


  元老 ・ 西園寺公望。
  内大臣 ・ 牧野伸顕。
  総理大臣 ・ 犬養毅。


  更に・・・。


  前総理大臣 ・ 若槻礼次郎。
  前外務大臣 ・ 幣原喜重郎。
  内務大臣 ・ 鈴木喜三郎。
  鉄道大臣 ・ 床次竹二郎。

  枢密顧問官 ・ 伊東巳代治。

  三井銀行筆頭常務 ・ 池田成彬等々・・・。


  政 ・ 官 ・ 財の重要人物が標的とされていた。
  国民大衆の生活の窮乏・・・取り分け農村部の破滅的様相を顧みず、 自己の利益拡充に狂奔する支配階級に一大鉄槌を加え、 その覚醒を促すと云うのが、 血盟団の主張であった。

  井上日召は、 いわゆる 十月事件 関係者の一人であった。
  然し、 事件の首謀者・・・ 橋本欣五郎大川周明 等の醜悪な行状に接し、 その連中の動機に深く疑問を抱いた事が、 彼の一派を拙速なテロル行動に奔らせる契機となっている。
  井上一派は、 同様に・・・橋本 ・ 大川を見限った 橘孝三郎 一派 ・ 藤井斉 等海軍青年将校一派と結託。
  政 ・ 財界要人十数名を同時に襲撃 ・ 殺害する計画を練るが、 時しも 第一次上海事変 が勃発。
  海軍将校達が戦地へ動員されてしまった為、 計画は頓挫する。
  井上一派は、 一人一殺主義に戦術を切換え、 単独で決起したのである。

  血盟団事件の後・・・。
  橘 ・ 海軍将校一派の動きは 五 ・ 一五事件 へと収斂されていく事になる。

  1930 (昭和5) 年11月・・・ 総理大臣 ・ 濱口雄幸 が兇弾に斃れてから、 僅かに一年数ヵ月・・・。
  繰り返されるクーデター未遂 ・ 白色テロルの脅威に、 政 ・ 財界は震え慄いていた。
  暴力に屈する事なく、 ブルジョア ・ デモクラシーの理念を固守しようとする、 気骨有る政治家は尚も存在したが・・・。
  軍部 ・ 反動勢力の台頭に迎合する空気が、 次第に支配的と成っていくのである。











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