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土曜日の書斎 別室

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ロッキード事件

昭和史断章  ’70年代セピア通信


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ロッキード事件




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  前総理大臣 ・ 田中角栄 の名が、 いわゆる コーチャン証言 から浮上した灰色高官の一人としてクローズ ・ アップされてから、 丸紅ルートの解明を進める東京地検特捜部の動向は、 全国民注視の的となっていたが、 是の日・・・1976 (昭和51) 年7月27日午前8時50分。
  特捜部は、 前総理 ・ 田中角栄を、 外国為替法違反の容疑で逮捕。
  政 ・ 官 ・ 財界の実力者から反動団体の大立者まで大量の被疑者を出し、 戦後最大規模の疑獄と目された ロッキード事件 の捜査は、 前総理大臣の逮捕によって、 最大の山場を迎えた格好となった。

  ・・・田中角栄逮捕の速報は、 モントリオール五輪の実況中継と交錯しつつ、 日本中を駆け廻った。
  予測されていた事ながら、 政権与党最大派閥の首長として、 政 ・ 財界に絶大な影響力を行使していた人物の検挙は、 改めて国民に深い衝撃を与えずにはいなかった。

  8月16日。
  東京地検は、 田中を、 受託収賄罪及び外国為替法違反で起訴。
  総理大臣在任中・・・。
  米航空機産業大手の ロッキード社 が自社製の大型旅客機を全日空社へ売り込むに際して、 ロ社の日本代理店である総合商社 ・ 丸紅 からの請託に応じ、 便宜を供与。
  その謝礼として現金五億円を、 丸紅経由で受け取った・・・というのが、 起訴事実の概要である。

  8月20日 ・ 21日。
  元運輸大臣 ・ 橋本登美三郎 と元運輸政務次官 ・ 佐藤孝行 が、 前後して、 共に受託収賄容疑で逮捕された。
  田中角栄同様・・・全日空社の次期主力機選定に際して、 ロッキード社へ便宜供与を行ったとの疑惑によるものである。
  相次ぐ高官逮捕劇を受けて、 マスコミの報道姿勢は過熱症状を呈する。
  新聞社もTV局も、 一連の捜査経過を 巨悪 摘発の一大イベントに仕立てるべく狂奔し、 表面的な報道ばかりが、 連日ブラウン管や新聞紙面を賑わす事となる。

  戦前から 負の遺産 として受け継がれた、 日本特有の政治体質。
  金権 ・ 腐敗政治を生むに至った、 日本的土壌。
  それらの構造的問題点を析出し、 日本型権力の闇の深部に迫ろうとする冷静な視点が、 何時の間にか見失われていた事は否めない。










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