ワルキューレ/将軍たちの夜
【土曜日の書斎】 名作断章
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1944年7月20日。
東プロイセン州ラステンブルク ・ 総統大本営内・・・。
総統 アドルフ ・ ヒトラー 臨席による作戦会議の最中、 大音響と共に爆発が起り、 議場は一瞬で爆煙に呑み込まれた。
時限爆弾 を密かに持ち込んだのは、 予備軍参謀本部の クラウス ・ フォン ・ シュタウフェンベルク大佐 。
狂気の独裁者を打倒し、 祖国を破滅から救おうとする人々による、 クーデター計画・・・ ワルキューレ作戦 発動の号砲でもあった。
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ワルキューレ/将軍たちの夜
(1944年7月20日)
1
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(ブライアン ・ シンガー監督作品 『ワルキューレ』 )
枢軸軍の敗勢が誰の眼にも明らかとなった1944年・・・。
独軍高級将官多数を賛同者として謀議が凝らされた ヒトラー暗殺計画 は、 非常に劇的でスリリングな題材だけに、 繰り返し映像化されて来ました。
近年になって、 その中心人物の一人であるシュタウフェンベルクを主人公とする作品が、 如何してか、 相次いで制作されている印象を受けます。
その最新作 『ワルキューレ』 では、 ハリウッド ・ スターの トム ・ クルーズ がシュタウフェンベルクを熱演しています。
あらゆる役柄に意欲的に挑戦するトム ・ クルーズですが、 彼の場合・・・。
トム ・ クルーズだ~~!!
・・・と思った瞬間から、 もうトム ・ クルーズにしか見えなくなってしまうという、 非常に辛い部分が宿命的に有る様に思えます。
(当時の) 愛妻 ニコール ・ キットマン とピッタリ息の合った共演を見せた 『遥かなる大地へ』 とか・・・。
当初トムの起用に猛反対であった原作者 アン ・ ライス女史 をして脱帽せしめた 『インタビュー ・ ウィズ ・ ヴァンパイア』 の様に、 非常に良い作品は多いのですが・・・。
閑話休題・・・。
ヒトラーの死を確信したシュタウフェンベルクは、 ベルリンに舞い戻ると、 ワルキューレ作戦の陣頭指揮に任じます。
国防軍の手で全権を掌握し、 東西両戦線で同時に講和を締結する手筈でした。
然し、 ヒトラーは存命 していたのです。
シュタウフェンベルクが作戦会議室に持ち込んだ爆弾の破壊力が予想外に弱かった事。
頑丈な会議用机が爆風を遮った事が幸いし、 奇跡的に軽傷で済んだのでした。
ヒトラー生存が報じられると、 作戦は急速に勢いを失っていった。
叛乱は 一日で鎮圧 され、 首謀者は即決裁判で銃殺刑に処せられました。
シュタウフェンベルクも又、 叛逆者 の汚名を着せられ、 銃殺隊の前に引立てられる。
然し、 死に臨むシュタウフェンベルクの態度は、 プロシア貴族出身者らしい、 毅然たるものであったと云われます。
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2
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(アナトール ・ リトヴァク監督作品 『将軍たちの夜』 )
第二次世界大戦を背景とした異色ミステリー作品。
さながらドイツ第三帝国の凋落を象徴するかの様に、 抑制していた内奥の狂気を露わにしていく独軍将官の姿が描かれます。
『アラビアのロレンス』 で共演した ピーター ・ オトゥール と オマー ・ シャリフ の、 再度の顔合わせも話題を呼びました。
ワルシャワとパリ。
独軍占領下の二つの都市で、 歳月を隔てて発生した 娼婦惨殺事件 。
奇しくも両事件の捜査を担当する事となった 独軍情報将校 ・ グラウ中佐 (オマー ・ シャリフ) は、 その異常な手口から、 同一人物の犯行である事を確信する。
彼が、 重要容疑者として追っているのは、 歴戦の名将であり、 ヒトラーの信任も厚い、 武装親衛隊の タンツ将軍 (ピーター ・ オトゥール) であった。
1944年 7月20日 。
時しも、 ドイツ本国では ヒトラー暗殺計画 が実行に移される。
警報発令によって、 パリ占領軍司令部に激震が走る中・・・。
遂に決定的証拠を掴んだグラウは、 タンツを逮捕すべく、 武装親衛隊司令部へ単身乗り込むのであったが・・・。
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