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土曜日の書斎 別室

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ミッドウェー海戦前夜

戦史断章  太平洋戦争編



ミッドウェー海戦前夜




1


 
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  昭和17 (1942) 年6月4日。

  ミッドウェー島奇襲敵機動部隊撃滅 ・・・。
  二重の作戦任務を与えられた 南雲忠一中将 指揮下の 第一機動部隊 (空母四隻基幹) は、 敵情を十分に把握出来ない儘、 北西方向から作戦海域へ進入しようとしていた。

  一方、 暗号解読 によって、 日本機動部隊来攻を事前に察知した米海軍は、 ミッドウェー島の防備を固めると共に、 ハワイから 第十六機動部隊 (空母二隻基幹) 及び 第十七機動部隊 (空母一隻基幹) を出撃させ、 同島北東三百浬の洋上に待機させていた。
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  米機動部隊は、 ミッドウェーへ接近して来る南雲機動部隊に対し、 側面から奇襲攻撃を掛ける態勢を取っていたのである。

  ・・・南雲機動部隊は、 すでに作戦企図が露見している事も、 米機動部隊が近海に進出している事も知らなかった。








2


 
  同日夜・・・。
  南雲機動部隊の後方三百浬洋上。

  山本五十六司令長官が陣頭指揮を執る MI (ミッドウェー) 作戦主力部隊 の旗艦 ・ 大和では、 敵信傍受班 によって、 ミッドウェー島北東海面を遊弋中の米空母の発した コールサイン が捉えられていた。
  主力部隊司令部は、 ハワイ方面で敵信が輻輳し始めた情況から、 米機動部隊が出撃した公算大 と判断し、 警戒を強めていたのである。

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  然し、 是程の 重大情報 を南雲機動部隊に逓伝しなかった。
  先行する南雲機動部隊は、 当然是を受信しているに相違ないと思い込んだ事。
  作戦海域突入を目前にして無線封止を解除し、 自らの位置が露見するのを忌避した事に因る。

  南雲機動部隊は、 敵信を傍受していなかった。
  空母の構造上の特性 として、 夙に指摘される所であるが・・・。
  甲板を平面型に、 艦橋の位置を低く設計 している都合上、 他の艦種と比較して、 通信を傍受し難い と云う弱点を持っているのである。








3


 
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  同日・・・。
  北太平洋アリューシャン列島東部 ・ 米国領ウナラスカ島。

  角田覺治少将 指揮下の 第二機動部隊 (空母二隻基幹) は、 ダッチハーバー軍港 に対して、 空爆を敢行。
  AL (アリューシャン) 作戦 の幕が切って落とされた。
  アリューシャン西部の アッツ ・ キスカ両島 を攻略確保する事によって、 米基地航空隊の進出を阻止し、 併せて米機動部隊の来襲に備え、 北方方面からの 日本本土爆撃の脅威を除去 する。
  同時に、 米国 ・ ソ連の連携を遮断 する・・・と云うのが、 主な作戦目的であった。

  また、 ミッドウェー作戦の陽動 としての意義も盛込まれていたが、 今更云うまでもなく・・・その 効果は皆無 であった。
  海軍としては、 本命とするミッドウェー作戦との同時進行で、 不本意な兵力拡散 を余儀なくされる結果となった。

  第二機動部隊による空爆は、 翌日も反復実施される。
  熾烈な対空砲火を衝いての攻撃の最中、 直掩隊の零式戦一機が被弾。
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  機は、 ダッチハーバー東方の アクタン島 を目指し、 湿原地帯に不時着を試みるが、 失敗。
  搭乗員は死亡した。
  一ヶ月間以上も打ち捨てられた機体は、 米軍に鹵獲される事となる。


  最高の軍事機密と目されていた 零式戦の略完全な機体 が、 太平洋の戦場で初めて、 米軍の手に渡ってしまったのである。









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