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米国ペンシルバニア州アダムズ郡。
ゲティスバーグ市内から撤退した 合衆国政府軍 は、 市南方の丘陵地帯に布陣し、 態勢の立て直しを図っていた。
そして、 新たに司令官に任じられた ウィンフィールド ・ S ・ ハンコック少将 陣頭指揮の下に、 4kmに渡る長大で堅固な防衛線の構築に成功する。
併せて、 友軍の来援を得て、 戦力の補完 ・ 強化が進められていた。
是に就いては 南部同盟軍 の方も同様で、 精鋭部隊が続々と集結しつつ有った。
ゲティスバーグ周辺の両軍兵力は、 総計で十万名以上に膨れ上がっていた。
前衛部隊同士の遭遇戦から発展した戦闘は、 今や・・・ 主力決戦 の様相を呈していたのである。
何れも結果論であるが・・・。
南軍司令官ロバート ・ E ・ リー は、 ゲティスバーグに所要兵力を押さえに残し、 軍主力を北進させるべきで有った・・・と云われている。
又、 南軍としては攻撃の手を弛めては成らなかった。
丘陵地帯に拠る合衆国軍に防備を整える間を与えず、 一気呵成に攻め立てて、 完膚なきまでに叩きのめして置くべきで有った・・・とも云われている。
敢えて攻撃を急がなかったのは、 前衛部隊指揮官が慎重過ぎたから。
敵情が不明な上に自軍の蒙った損害も大きく、 追撃を躊躇したから・・・とされる。
何れにしても、 丘陵地帯の合衆国軍の存在を、 北部侵攻作戦に破綻をもたらす程に差し迫った脅威と捉えていなかったのは確かで有ろう。
是の日・・・早朝。
敵情視察を行ったリーは、 合衆国軍防衛線最左翼に位置する リトル ・ ラウンド ・ トップ と呼ばれる丘陵の攻略を決断する。
流石に・・・リーの戦術眼は、 同丘陵が敵防衛線の要になっている事を看破したのである。
この頂上を制すれば、 防衛線の中央部・・・ セミタリー ・ リッジ を砲の射程内に収める事が出来る。
リーの命令に基いて、 攻撃軍がリトル ・ ラウンド ・ トップに向かって前進を開始したのは、 午後4時を回ってからの事。
担当は ジョン ・ B ・ フッド少将 麾下師団で、 リトル ・ ラウンド ・ トップ攻略に、 当初・・・ 歩兵五個連隊 が差し向けられた。
攻撃準備に随分時間を費やした感が有るが、 余りに慎重過ぎたからか。
当然、 敵も十分な兵力を配備して守りを固めているとの予測に立っての事か。
実は、 丁度その頃・・・。
信じ難い過誤 (詳述するのは些か煩瑣である) によって合衆国軍の陣容に大きな乱れが生じており、 攻撃目標のリトル ・ ラウンド ・ トップ周辺は無防備に近い状態に置かれていたのである。
敵失に乗ずる格好で、 攻略部隊は難なく目標を確保出来る筈であった。
合衆国軍は絶体絶命の危機を迎えていた・・・と云える。
然し、 将に・・・紙一重の差で、 その危機は回避されるのである。
司令部から派遣され、 リトル ・ ラウンド ・ トップを視察中であった G ・ M ・ ウォーレン准将 は、 南西斜面から迫って来る攻略部隊を視界に認める。
愕然としたウォーレンは、 直ちに援軍を要請。
歩兵4個連隊がリトル ・ ラウンド ・ トップに急派される。
その最終配備が完了したのは、 実に・・・攻撃部隊が姿を現わす十分前の事であった。
( 『ゲティスバーグの戦い/南北戦争運命の三日間』 )
その直後、 両軍の間に戦端が開かれ、 同丘陵南西斜面一帯に於いて、 凄絶な攻防戦が繰り広げられる事となる。
南軍の攻撃は熾烈を極め、 各守備隊は度々崩壊の危機に立たされたが、 頑強に抗戦を継続し、 敵の前進を阻んだ。
取り分け、 最左翼に配置された ジョシュア ・ L ・ チェンバレン大佐 指揮下の 第20メイン連隊 は、 獅子奮迅の活躍を示した。
銃弾をほぼ撃ち尽くしてしまうと、 果敢な銃剣突撃を敢行し、 攻撃軍を圧倒した。
斯くて、 死闘数時間・・・南軍は遂に撃退されるのである。
同日・・・。
南軍の攻撃は、 合衆国軍防衛線最右翼・・・ カルプス ・ ヒル に対しても行われたが、 猛反撃を受けて退却した。
苦境に立たされていた合衆国軍は、 次第に勢いを盛り返し、 防衛線の各所で南軍を圧倒しつつ有ったのである。
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