土曜日の書斎 別室

2010/04/13(火)23:15

物語の中の出来事 (小説 『宮本武蔵』 から)

(東映 『宮本武蔵  巌流島の決闘』 )   御存知・・・ 吉川英治 の代表的長編小説 『宮本武蔵』 。   剣の修行を通して、 自己完成を目指す主人公 ・ 武蔵 と宿命のライバル ・ 佐々木小次郎 の対決。   巌流島の決闘 は、 全篇のクライマックスとして描かれます。   雄藩 ・ 細川家の指南役の座を射止めた小次郎であったが、 その胸中は鬱々として愉しまない。   晴れて、 天下一の兵法者たる評価を得るには、 どう有っても、 年来の好敵手である武蔵を倒さなくてはならないのである。  その一念は、 愈々退っ引きならない所まで来ていた。   武蔵は、 小次郎からの果し合いの申し出に応諾する。 (松竹 『宮本武蔵』 )   決闘当日・・・ 慶長17 (1612) 年4月13日 ・・・。   巌流島へ向かわんとする武蔵に 婚約者 ・ お通 が追い縋る。   いや・・・!  お通だけではない。   武蔵を仇と付け狙っていた お杉婆 。   更に、 竹馬の友の 又八 。   盗賊の娘 ・ 朱実 も現われる。   二人は、 何時の間にやら夫婦となり、 赤児まで設けている。   それまで四散していた登場人物達が、 一堂に会して、 武蔵の前に現われるのである。   物語が、 今しも大団円を迎えんとする間合い・・・。   何という 御都合主義 であろうか?   今までの経緯は、 スッカリ水に流したお杉婆。   現金なもので、 応援団長の如く振舞う。   「武蔵 (たけぞー) ~~!  負けるでないゾ~~~ッ!!」   少しは、 お通の気持ちも察したら良いものを・・・。   有らん限りの声を張り上げて、 武蔵にエールを送るのであった。   一艘の小舟に身を委ねる武蔵。   悲痛な面持ちで、 小舟を見つめるお通。   小舟は、 朝靄の中に消えた。   武蔵が決闘場に姿を現わしたのは、 約束の刻限を遥かに回った頃合いであった。   長剣を抜き放って、 身構える小次郎。   昇る太陽を背に、 相対する武蔵の手には、 小次郎の物干竿よりも長い、 鋭く削られた一本の得物・・・櫂が握られていた。   秘剣 “燕返し” を封じるための、 武蔵の術策であった。 (東映 『宮本武蔵  巌流島の決闘』 )   二人の兵法者の・・・宿命の対決が始まろうとしていた。

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