土曜日の書斎　別室

　 1946 （昭和21） 年 　 天皇人間宣言。 ･･･昭和天皇、 自らの神格化を否定。


　 ・・・朕は爾等国民と共に在り、 常に利害を同じうし休戚を分たんと欲す。
　 朕と爾等国民との間の紐帯は、 終始相互の信頼と敬愛とに依りて結ばれ、 単なる神話と伝説とに依りて生ぜるものに非ず。
　 天皇 を以て 現御神 （あきつみかみ） とし、 且日本国民を以て他の民族に優越せる民族にして、 延て世界を支配すべき運命を有すとの 架空なる観念 に基くものにも非ず。 ・・・

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　 終戦後、 外国軍隊の占領下で迎える最初の元日･･･1946 （昭和21） 年１月１日。
　 昭和天皇は、 いわゆる･･･ 新日本建設に関する詔書 （国運振興ノ詔書） を発し、 明確に、 自らの神格化を否定した。

　 1935 （昭和10） 年夏の 第一次国体明徴声明 （＝天皇神格化宣言） 以来、 非合理性のヴェールに覆われ、 国民から隔絶した神秘的存在･･･ 現人神 に祀り上げられていた昭和天皇は、 立憲君主制国家の元首としての地位を回復する。
　 軍部が、 天皇の 統治権を壟断 し、 天皇の名の下に全国民を支配していた、 異常な時代･･･。
　 昭和10年代の国内政治を機能不全に陥れ、 遂に日本の針路を誤らせるに至った、 異常な状況に、 名実共に終止符が打たれたのである。

　 そして、 それは同時に･･･。
　 日本復興の史劇の舞台裏で演じられている、 支配体制再編を廻る凄絶なドラマの一つの段切り。
　 旧来の支配勢力を最大限に温存しようとする （日本の） 思惑と、 世界戦略上の立場から、 占領支配の混乱を恐れる （米占領軍の） 思惑との間に、 一致点が見出された結果でもあった。
　 政府官僚機構を占領機構に転化させて存続する事と並んで、 革命思想の波及を抑止する精神的支柱として天皇制を存置する事。
　 来たるべき米 ・ ソ対立を見越して、 それが米国の世界戦略にとって如何に有益であるか･･･ （日本の支配層は） 様々な経路を通して強調し続けていたのである。

　 天皇制権力機構 の一部改編 （軍部 ・ 思想警察等･･･非民主的部門の切り捨て） による 間接統治機関化 の方向性が定まった事を示すのが、 天皇の人間宣言 であったと云える。
　 同年11月３日。
　 国民主権を謳う新憲法が発布され、 天皇は 国民統合の象徴 と位置付けられ、 政治権力から分離された存在となる。
　 やがて、 大陸 ・ 半島情勢の急激な変化を受けて、 米国の対日占領政策は、 日本を反共防波堤に仕立てる方向へ大転換を遂げ、 日本の支配層も （革命への危惧から） 対米従属の姿勢を一層強めていくのである。