本日、 ミッドウェー海戦。 南雲機動部隊覆滅される(4)
今日では、 南雲機動部隊は 敗れるべくして敗れた との認識が、 完全に定着しています。 いわゆる “運命の五分間” も、 レトリック以上の効力を有する事はなくなりました。 敗北を 冷厳な事実 として受止め、 敗因を 冷静な視点から分析 しようとする姿勢が、 若い人達の間に確実に浸透して来ているのは、 大変喜ばしい事です。 又、 ミッドウェー海戦に勝利していたなら、 以後の戦局は日本優位の上に展開したであろうとか、 米国との早期講和も可能であったろうとする楽観論・・・幻想も、 今や退嬰しつつあります。 ミッドウェーで主力空母四隻を失わなくとも、 ガダルカナルの大消耗戦 を回避し得ていたとしても、 昭和18年後半に開始された 米軍の本格反攻 を押し止める力は、 到底日本に備わっていなかったと云うのが、 軍事評論家や戦史研究者の間で共通している見解だからです。 対米戦争が、 日本の 戦争遂行能力 を遥かに越える、 国家的暴挙に等しいものであった事は、 後世の私達の眼から明らかで、 一片の疑義を差し挟む余地もありません。 ソレなら、 同時代の戦争指導層が、 国力の実情について全く無知であったのかと云うと、 決してソウではない。 大蔵省 も、 企画院 も、 海軍軍令部 も、 日本の 貧弱な工業生産力 では、 到底米国に太刀打ち出来る筈がない事を、 詳細なデータ比較から十二分に認識していた筈です。 連合艦隊司令長官 ・ 山本五十六大将 にしても、 世界無比の工業生産力と超絶した科学技術力を誇る米国を相手とした戦争に、 日本勝利の方程式など存在しない 事は、 最初から分かっていたでしょう。 山本長官は、 海軍部内の良識 を代表する人物として周知されています。 日本の国際社会からの孤立 や 日米関係の悪化 を、 真剣に憂慮していました。 ソレ故、 仏領インドシナ進駐 時にも、 日独伊三国軍事同盟締結 に際しても、 一貫して反対の態度を取続けたのです。 全く勝利の見通しの立たない戦争・・・。 然も、 海軍軍令部と連合艦隊に与えられた任務は、 戦争を遂行し、 勝利の展望を開く事でした。 太平洋戦争に、 基本戦略構想 と呼べるものは存在しなかったと良く云われますが、 当時の軍令部や連合艦隊からしたら、 基本戦略構想など立てたくとも立てる方途がなかったというのが、 実情に近い所かも知れません。