2011/05/30(月)06:45
有川浩著『海の底』読了
有川浩著『海の底』を読了しました。
ストーリーを一言で要約すれば、「未知の巨大生物の襲来」です。
もう少し、話の内容を説明しますね。
話の舞台は、米軍の横須賀基地です。4月の桜祭りで、開放されています。
停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』は、突如、出航命令を受けました。しかし、巨大な甲殻類の襲撃を受けて、出航できません。
『きりしお』の実習幹部生・夏木大和三尉と冬原春臣三尉は、基地外への脱出を試みました。
ところが、基地内には、子供たちが取り残されていたのです。
『きりしお』の川邊艦長は、子供たちのために命を落としました。大和と春臣は、13名の子供と共に、『きりしお』艦内で、救助を待つ状況に追い込まれます。
日本政府から許可が下りないため、自衛隊は火器を使用することができません。「災害時の救助活動」に該当するためです。
警察も、懸命に救助活動を行いました。しかし、巨大な甲殻類を相手にする事態は想定されていないため、一方的に捕食されました。
国会内の派閥争いで、日本政府の足並みが揃いません。自衛隊は迅速な対応を取れないままです。そのため、機動隊が、苦しい戦いを強いられることになります。
米軍の思惑も絡み、日本とアメリカの間で、政治的な駆け引きが行われました。
ようやく自衛隊に出動命令が下った後は、いとも簡単に、巨大な甲殻類「サガミ・レガリス」を撃破していきます。
『きりしお』の子供たちが救出され、海中に残る「サガミ・レガリス」を駆逐したところで、戦いは終わりました。
「もし、日本が巨大生物の襲撃を受けたら、どうなるのか」を、徹底的に考察した作品です。
日本政府は、内部で揉めるでしょうし、内閣が指示を出さない限り、自衛隊は動けません。
自衛隊や警察、機動隊は「限られた条件の中で、いかに戦い抜くか」という命題を、突きつけられるわけです。
一方、『きりしお』艦内に立て籠もった大和と春臣は、子供たちの世話をしなければならなくなります。
女子高生の森生望を除き、小中学生です。子供たちの中でも、諍いは絶えません。いつ来るか分からない救助を待つ不安と、複雑な事情を抱えて、何度も衝突が起きます。
結末は、すべての子供たちにとって、優しいものではありません。それでも、「命あってこそ」ですよね。
明日は、有川浩著『クジラの彼』の感想を書きます。