2012/10/06(土)07:22
石野晶著『月のさなぎ』読了
石野晶著『月のさなぎ』を読了しました。
ストーリーを、ごく簡単に説明すると、「外界から隔絶された、学園の物語」です。
もう少し、詳しく説明しますね。
数千人に一人の割合で生まれる「月童子」は、6歳で学園に入り、18歳で成人すると、外の世界へ出て行きます。
「月童子」は、生まれつきの性別を持ちません。成人が近づくにつれて、体が変化していきます。ただし、本人が性別を選ぶことはできません。
「月童子」の薄荷は、外の世界からやってきた少年・雪矢と出会います。退屈な学園の生活の中で、変化を求めて、薄荷は、雪矢と接触を続けました。
薄荷は、一度も見たことがない、外の世界に憧れていました。雪矢から、外の世界の話を聞いている間に、薄荷は、雪矢に惹かれていきました。
薄荷は、降誕祭の前日、学園を抜け出しました。外の世界へ戻る、雪矢を追うためです。
しかし、逃亡の途中、雪矢が死亡しました。薄荷は、同室人である空と、理科助手のカイの助けを得て、学園へ戻りました。
学園に戻った三人は、監禁されました。
やがて、「月童子」に関わる秘密と、様々な思惑が、明らかになっていきます。
一連の事件の首謀者が判明し、空は首謀者を追い詰めました。
再び、学園は、静けさを取り戻しました。
ストーリー紹介は、以上です。
実際には、もっと細かい経緯がありますので、興味を持たれた方は、ご一読下さい。
最初の印象は、「すっきりしないなあ」でした。
「すっきりしない」理由は、いくつか考えられますので、書き出します。
1 ストーリーに入り込めない
重要な設定が後出しのため、だんだん関心が低くなっている
黒幕が、最後に、秘密をべらべらと喋るため、話に緊迫感が欠ける
2 時代背景が分かりにくい
時代設定がはっきりせず、イメージがつかみにくい
話の舞台が「学園」に固定されているため、外界の情報が乏しく、世間一般の事情が、なかなか伝わってこない
3 登場人物に対して、なかなか感情移入ができない
「読者が知りたい、登場人物の心理≠作者が描いている心理」という印象を受ける
1に関しては、詳しく説明する必要はないと思います。
2については、話の展開上、あえて「分かりにくい」状況を作ったのでしょうね。映像であれば、すんなり理解できたかもしれません。
3は、もう少し描いてほしかった点です。話の前半では、丁寧に描かれています。しかし、話が進むにつれて、描写を簡略化しているように感じました。もっとエピソードを絡めて、深く掘り下げてもらいたかったです。
ストーリー自体は、きちんと結末まで描かれているので、不満はありませんでした。
次回は、日野俊太郎著『吉田キグルマレナイト』を読む予定です。感想は、来月に書きます。