2015/06/18(木)20:34
退化する脳をもつものの悲しみ
昔は読んだことのある本について忘れるということはなかった。
でもあるときから、忘れるようになってしまった。
忘れることがなかった時代は同じ本を意図せず2度読むことはなかった。
あるとき、半分くらい読み進んだタイミングで
あれ、この本・・・読んだことがあるような、という奇妙な感覚にとらわれ、
よくよく調べてみたら、そう一度読んでいたのだった。
今はもう、読んだ本について鮮明に覚えているとというほうが少ない。
だいたいのこととか、必要な要約とか。そういうのは多少残るけど、
自分の中で必要としない情報はさらさらと零れ落ちていく。
記憶というのは退化する脳の一機能だとアン・マキャフリィは書いていたが、
まったくその通りで、老化という現象の一つなのかもしれないが、
素直に受け入れてよいものか抵抗すべきものなのか迷うところでもある。
そして今の私には読書はもうできない。
なぜか文章をずっと読んでいくことができなくなってしまったのだ。
幸いにも短いものならなんとかまだなっている。
そのうちこの能力すら失われる日が来るのかもしれないと思うと
いささか不安な気持ちになるのだった。