今夜も空の下～世界放浪浪漫譚～

1999年8月23日（月）


日本をたってすでに２ヶ月近くたっていた。
日本ではもう夏のおわり頃だろうか？
南半球にいる自分に日本の夏の光景はあまりに遠く感じられたが、それを思い起こすことは悪い気はしなかった。

今夜のフライトで南米を発つ予定でいた。

　マイアミ行きのフライトは夜22:30。それまで再度日本大使館に寄って友人達からの手紙を受け取る。
　大使館は相変わらずものものしい警備であったが、受付のお姉さんには顔を覚えれていたのでスムーズに日本からの手紙とFAXを受け取れた。
　FAXなんか受け取れるんだね。びっくりしたよ。
手紙はどれも「今年の日本は暑いよ～」という書き出しで始まっていて、夏らしい夏にうらやましい気もしたが、彼らは彼らで僕のほうがよほどうらやましいに違いない。
　彼女からはあいにく来ていなかったが、次の受け取り地としてジュネーブの日本領事館を指定していたからもうそちらに送っているのだろう。
　その後、今日もまた日本料理屋に行って刺身定食を食べたあと、夜になって荷物をまとめ、そしてホテルの女主人に
「Hasta ano que biene!」（また来年！）」と大きな声で挨拶して空港に向かった。

　定刻通りに離陸した飛行機の窓からペルーの夜景が輝いて見えた。
　そしてかすかに胸を締め付けるような想いがよぎった。

　２ヶ月間の間にもいろいろな想いを重ねながら、時間を旅を重ねてきたが。今日ここでここ南米とはお別れなのだ。
　南米にもっともっと旅したい場所はあったはずだが、今は一日も早く次の目的地を目指したい。

前に進みたい。
次の夢に進みたい。

　ひとつの夢を叶えた南米という土地で達成感と閉塞感を感じた僕の気持ちはさらなる目標を追い求めてヨーロッパアルプスにむかっていた。
　アンデスという３年間思い描いた夢にとどまることがなく、僕の気持ちは次の夢にむかっていた。

　ヨーロッパアルプスのグランドジョラス北壁に登りたい
　アイガーのミッテルレギ稜にも登りたい
　アフリカのバチアン北壁やルヴェンゾリに登りたい。
　ヒマラヤにも行きたい
　ニュージーランドで沢登りしたい！　

　叶えたい夢がぞくぞくと心の奥そこから沸いてきてあふれるような想いに心がドキドキした。

　もう後ろ向きな想いにとどまりはしない。
　俺は俺で前を向いて歩いて行くんだ。
　眼下に小さくなる南米を眺めながら、このペルーに来た時はうってかわった気持ちでいる自分に新鮮な驚きを感じていた・・・