ミヨシ・モンティーの世界

2012/02/02(木)01:43

モンティーミヨシ小説:呉の恋の物語 第9回

 マサは呉の港から船を眺めていた。 「歴史にはきれい事しか残らないなあ。有名な言葉に『歴史は繰り返す』と言うのがあるが、今歴史が繰り返そうとしている時、若い人が本当の事を知らないとためにならない」  マサはこう決意した。 「耳ざわりの良いものではないが、聞いていただく。知っていたら不幸になるのを防げるからだ」  昭和三十年代の初め広島県呉の街には、夫が戦死した女性や婚期を逸した女性がひと目をはばかることなく男性にちょっかいを出していた。 「今でいう逆ナンパ」  である。 夜になれば、 「パンパンと呼ばれた売春婦」  が街角に立っていた。 マサは子供心に、 「戦争に負けたら人々の心はこれほどすさむのか」  と情けなかった。

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