指揮官で組織は変わる
自分で話してて、なるほど、って思ったので書いてみます。今、大学3年生のアルバイトの男の子と、就職活動にあたっての雑談をしてて、アドバイス(というよりはサジェスチョン)として話した話です。企業が正社員採用する場合に望むもの…特に技術系ではない場合。組織を構成して、その組織の一員として働く場合に要求されるのは、個人の技術ではありません。これは過去にも書いた事があります。高い技術というだけならば、パートやアルバイトでも手に入れられます。パートやアルバイトではできない事を、できるようになってもらわなければ困るわけですね。ひとりでできる事には限りがあるけれど、組織で行う事の力を引き出せる事。で、この彼は野球部でポジションがキャッチャーなのですよ。野球でのたとえ話として、こういう話をしました。組織をコントロールする、というのは組織の力を引き出す、ということです。それは当然、GM、監督、コーチ、現場の選手の先発、控え、それぞれの立場で行うべき仕事は違います。正社員に要求されるのは、少なくとも先発して試合終了までを考える力です。1打席立ってヒット打ったらそれでよし、とか、まかされたイニング抑えたらそれでよし、で済ませては、組織全体を見る目ではありません。たとえば、守備位置を変える。相手の打者によって、守備位置を変える。ここまでは、仕事になれた人が次の仕事を予測して動くのに似ています。となりのポジションの野手にも声をかけて、変えさせる。どうでしょう。自分の責任の範囲内で可能な限りの対処です。部門の主任というところでしょうか。この時、指示を出した相手から「なぜ守備位置を変えるのか」と聞かれた時に、論理的に答えられなければいけません。もっというならば、相手のモチベーションが上がるように答えられなければならない。「よっしゃ!」って思わせたら、一歩目のスタートが違います。次のレベルは、ゲーム全体の流れの中で、全体の守備位置を指示できる。ランナー3塁は、1アウトと2アウト、点差、相手バッターによって外野の守備位置が変わります。サヨナラのランナーの時とそうでない時じゃ意味が違う。その時に、そのゲームの持つ意味を理解した上で、全員に指示が出せる。実は、これはセオリーの枠から出るわけではありません。仕事でいうなら、その日の全体の流れの中でルーティンワークの指示を、的確に出す、という事です。A,B,Cと3つの作業がある場合に、遅れているところ、進んでいるところを見定めて応援を入れたり、手抜きの指示(笑)をしたり。もちろん、その指示を出す時にその意図と内容が説明できること。いちばんアホな指示が、ただ単に「早くして!」って言うだけのやつ。いつもより明らかに遅いなら、その理由があるはず。いつもと同じなら、そう簡単にスピードは上がらない。モチベーションを上げる、というだけでもスピードは上がるので、それなりの根拠をもって声をかけなければなりません。無謀な指示を出されても、現場は「鼻で笑う」だけなのです。ここまでは、社員というか指揮官的立場に立つ可能性があるならば、できるようにならなければいけません。でなけりゃ、部下はついてきません。ちゅうか、これくらいの事ができない上司の言う事、すすんで聞けます?指揮官にはならない人でも、指揮官への文句はいくらでも言えるんです。さて、もう一段階アップ。監督に進言して、ゲーム全体の流れを変えてしまう事ができる。監督に進言する、ってのがポイントです。上司を動かせる、上司を納得させられる。つまりプレゼンテーションができる、と言う事です。この1点を取らせないか、とられてもいいからアウトカウントを増やすか。ピッチャーを交代させるかさせないか。もっとわかりやすく言いましょう。送りバントを考えずに打ちまくる、か、1点をもぎとって守りきる野球に徹するか。これをゲームの中で判断して、監督に進言して試合の流れを変える。これ、仕事で言うとね。店舗で「特売日!」ってな時に、売れ残りを恐れて商品足りなくなるくらいなら、余ってもいいからガンガンいけ、って時とその逆の時があるわけですよ。その日の予定は監督が立てます。今日は相手投手がたいしたことないから、ガンガン行こうぜ、とかね。ところが、その相手投手が一生に一度の素晴らしいピッチングをした場合、監督に進言するわけです。「ダメです。1点をもぎ取りにいきましょう。そのために、この作戦をいきましょう」みたいな。自分のまわりだけでなく、全体をみる。そして指揮をとる。あいつが指揮をとると、並みのチームが一ランク上の実力になったりする事はあるのです。守備位置を変えさせる事で、ヒットがアウトになる。これを繰り返せばピンチがなくなるんですから。リードでもって、何の変哲もないストレートをバッターが見逃してしまう。あんなにいいピッチャーだっけ?てなもんで。声のかけ方もそうです。「何がなんでも抑えてこいよ!」これはファンの発言です(笑)こんなの指示でもなんでもありませんね。抑えるために何をするか。初回のストレートと、最終回のストレートは意味が違うのです。営業に向かって「売ってこい!」って指示するのと同じ。どうやって?何を?そのための企画は?自分で考えろ、なんてのは自分の中にアイデアを持ってから、言う指示です。試合に勝つ、という目的のために組織の力を引き出す。状況や環境に合わせて、最適な態勢に変化させる。もちろん、ルールやマニュアルは重要です。また、試合は続きます。今日だけよければよい、というものではありません。負けを承知で経験の浅い選手を使い続ける事もあります。エラーややりすぎのカバーやフォローもしなくてはなりません。今日よくても、明日につながらないものもあります。目線を自分の周囲だけから、グラウンド全体へ、そして試合全体の流れを見て、選手全員とシーズンの流れの中でのその試合の意味を見る事ができるようになる。そして、最大限に効果の出せる指揮ができるようになること。実は、これができる人っていうのは社員であるとは限りません。パートやアルバイトでも、そういう目と実力を持つ人はいます。代走専門のプレーヤーが、ゲーム全体の流れを見通せないとは限りません。さて、現場指揮官を野球にたとえてみました。単に指示出せば指揮官ができる、ってわけではないという事です。でもって、指揮ひとつでチームの発揮できる力が変えられる。鈍足のバッターの時に、内野安打を警戒する守備位置の指示を出したら、それは指揮官の間違いですよね。高卒一年目のピッチャーをサヨナラのピンチのマウンドに送り込んで打たれたら。そりゃもう、指揮官の人選ミスでしょ(笑)そして大事な事。成功は部下の功績。失敗は自分の責任。指揮をする時には、自分の出した指示の論理的根拠は示しても、言い訳と責任逃れはいけません。出した指示の責任は、出したものがとるのです。その意思がないなら、言いっぱなしで済みますもんね。二度と部下は信頼してくれません。場合によっては、上司の言う事を聞いてるふりをして、将来への布石を打つ事もあるのです。と、まあこんな風に指揮をとるボスになりたいな、って思ってるけど…こんなふうに書いてるから、こんなふうにボスの仕事をやってるのかというと、そんな簡単ではない(笑)「おっぱい」とか言ってるくらいだし(笑)