ロングライドでは、精神的な(気分的な)要素も多分に関係してきます。多くの人は、長い距離を走る場合「後何キロ?」という風に残りの距離を考えます。残りの距離が短くなると、その嬉しさがバネとなって前へ進めるのです。
ただ、それには条件がひとつあると考えられます。それは、いままでに走った経験のある距離であることです。過去に走ったことがあれば、その経験に基づいて残りのイメージが立て易くなります。現状の身体の状態を考えて残りをどのように走るべきかが、見えてくるのです。だから、残りの距離が嬉しさに繋がって行くのでしょう。
それでは、走った経験の無い未知の距離の場合はどうでしょう?そうなのです。経験が無いので、どのような結果になるか見当もつかないということになりかねません。それは、不安でもあり恐怖でもあるのです。
そんな場合にはどうしたら良いのでしょうか?
残りを考えるのでは無く、今まで走った距離に10km加算することを考えるのです。遠い先のことを考えるよりも、まずは10km先のことの方が考えやすいと思われます。自分の身体を見つめれば、後10km走れるか走れないかの判断はつき易いものです。その先のことは、10km走ったその後に考えるのが得策なのです。
「もう少し走ろう。」「もう少し走ろう。」を繰り返しているうちに、どんどん距離は伸びて行くはずです。気が付いたときには、ゴールは目前に迫っているでしょう。
先の見えない事柄を攻略するには、身近な事柄を着実にこなしてゆくことが大切であるということが分かります。小さな積み重ねを繰り返すことが、やがて大きなことに繋がって行くということを忘れないことだと思っています。
精神的な面で、もうひとつ実践していることがあります。
サイクルコンピュータを付けずに走ることです。それはなぜかというと、自分のペースがサイコンの距離やスピード表示に惑わされてしまうからです。
思った以上にスピードが遅いと、自分の身体の調子が悪いんではないかとか、このスピードでは予定の時間までには着かないんではないかなどと余計な心配事を抱え込むことになりかねません。そういったことで、ペースが乱されることがもっとも危ういことでもあるのです。
まずは、自分の内に向かって神経を集中することが大切なこととなってきます。今回600kmオーバーを走って、サイクルコンピューターが無くても何の支障もありませんでした。フルームの場合は、また事情が違うでしょうが(笑)
今治でも今回2件目の回転すし屋(笑)に入り、クールダウンと補給を行います。回転すし屋に入ったのが、夕方6時ぐらいです。
いよいよ二日目の夜を迎えます。しまなみ海道を尾道に向けて北上します。もちろん、しまなみ海道の夜は初めてです(笑)
しまなみ海道は、大島に始まって伯方島、大三島、生口島、因島、向島の6つの島から成り立っています。ひとつの島を約1時間かけて走ると考えると、約6時間の行程となります。
焦ることなく確実にじっくりと前に進むことだけを考えます。
最初の来島海峡大橋を渡ろうとした時に、見事に夕日に出会うことができました。真っ赤に染まる海峡は正に絶景でした。このタイミングで絶景に出会うことができたことが、偶然とはいえ今回のロングライドのすべてを物語っているようにも思えました。
半ば疲れきった身体に、モリモリと気力が甦ってきたのです。
しまなみ海道へは、5年ほど前に2度ほど訪れています。漠然とした記憶をもとに、再びこの地を訪れましたが、自分の記憶がどれほどいい加減なものだったかを知らされました。
このしまなみ海道は楽勝でクリアできると考えていたのです。
橋を渡るための自転車道でのアプローチは、地獄のアップダウンでした。7つの橋を渡るので、7度同じように地獄を味わったのです。橋上はライトで照らされていますが、アプローチの自転車道はまったくの真っ暗闇といって良いほどに、暗いです。ぐるぐると何処を走っているのか分からないほどに、目まぐるしく道はうねっています。自転車に装着しているライトの明かりを頼りに進む他、術はありません。
今回、3つのライトを準備してきました。充電タイプの高輝度ライト2つと、電池式の通勤に使っているライトひとつです。
伯方大橋のアプローチの下りで、電池式のライトが怪しくなりしばらくたつと真っ暗になってしまいました。二日目の夜なので、当たり前といえば当たり前です。そのときは、まだ他に二つのライトを所持していたのでさほど危機感は覚えませんでした。
充電タイプの高輝度ライトに変えて走り出します。さすがに高輝度とあって電池式のものと比べると数倍の明るさがありました。一気に、世界が広がった感じがしました。
しかし、2時間ほど過ぎた大三島から生口島へ渡る多々羅大橋を渡りきってアプローチを下っているときです。突然、真っ暗となりどちらへ走れば良いのか分からなくなりました。寸でのところで、落車するところでした。
「あれっ。こいつ2時間ほども持たないんだ。」とがっかり感がしきりでした。外では充電することもできないために、最後のひとつの充電式ライトへ託するしかなくなりました。
島内では、わずかにある集落だけが明るいだけで、ほとんどの道はは真っ暗です。もし、この最後のライトが切れてしまったなら身動きが効かなくなり、朝まで待つ他なくなります。もし、そのような事態になったならタイムオーバーで終わってしまうのでしょう。
そのような自体を危惧して、生口島にある唯一1件しかないコンビニで予備の電池を購入した直後、案の定最後のライトが消えたのです。予備の電池を購入していなかったらアウトでした。立て続けにライトが切れたことに少し驚きました。ライトは考え直す必要がありそうです。特に一晩中走るナイトランの場合には念密な作戦が必要だと思いました。
ロングライドでの重要項目として、1、雨対策 2、ライト準備を挙げることができます。
しまなみ海道は自転車道の路上にペイントしてある標識に従って走るために、道に迷う心配はありませんでした。真っ暗な深夜でもです。
ただ、相当眠気もでてきて休憩の回数も増えてきました。走っては休み、走っては休みを繰り返します。最後の尾道大橋を渡ると、やっとの思いで尾道の駅前に辿り着きました。深夜2時の到着となりました。