[首相靖国参拝]「もっと丁寧に内外に説明を」
雨の中、傘もささずに拝殿へと向かい、手を合わせた小泉首相の胸には、いったいどのような思いがよぎっただろうか。
小泉首相が靖国神社を参拝した。首相に就任して以来、5回目の参拝である。
スーツ姿で公用車を降りた首相は記帳をせず、昇殿もしなかった。
過去4回の参拝では、いずれも「内閣総理大臣 小泉純一郎」と記帳して昇殿した。今回は参拝形式を簡略化し、私的参拝であることを強調したのだろう。
首相は参拝後、「総理大臣の職務として参拝したのではない」と語った。中国や韓国に対し「日本は平和国家として二度と戦争をしないこと、戦没者に対して哀悼の誠をささげるというのは当然なことだということをこれからも説明していきたい」と述べた。
しかし、中国政府や韓国政府は反発している。首相の靖国参拝をめぐって、国内にも様々な意見がある。それに対して首相はあまりにも説明不足である。
内閣が最重要課題とした郵政民営化関連法は、今月14日に参院本会議で可決、成立した。
11月にアジア太平洋経済協力会議(APEC)、12月には東アジアサミットや日韓首脳会談が予定されており、外交日程が目白押しだ。
17日は、靖国神社の秋季例大祭の初日だった。かつて歴代首相は、春季・秋季例大祭の期間中に参拝していた。
これらのことを勘案し、首相は参拝時期を決断したのだろう。
また首相としては、中国の要求に屈するという形で参拝を中止することは、避けたかったのではないだろうか。
先月30日の大阪高裁判決は、訴訟内容とは直接関係のない“実質的傍論”の形で、首相の靖国参拝は「違憲」という見解を示した。
しかし、その前日の29日の東京高裁判決、今月5日の高松高裁判決は、いずれも首相の靖国参拝について憲法問題には触れずに、原告の請求を棄却した。
高松高裁判決は「具体的事件解決のため憲法の解釈が必要となる場合にのみ、憲法解釈について判断するのが裁判所における違憲審査の在り方である」との見解も示している。
小泉首相は今年6月に、新たな国立追悼施設の建設を検討すると表明した。しかし、その調査費は来年度予算に盛り込まれるか否かも未定だ。
今後どのような形で政府として戦没者を追悼して行くのか。首相は体系立ててきちんと説明する責任があるのではないだろうか。
(2005年10月18日 読売新聞社説)