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モラと桃次郎と私のネコ的生活

モラと桃次郎と私のネコ的生活

エリザベスのひとり言vol.10「T君の

「T君の旅立ち」

 桜の花便りとともに我が家でもT君が東京の大学に進学するため旅立ちました。
どの親でもそうでしょうが、子供が巣立っていくのはうれしいような淋しいような複雑な想いです。でも1週間たちますが、一人分の家事が少なくなり,なんとなく物足りない気はしますが、子供が旅立ってしまった喪失感はまだ感じていません。「まだ」というのが適切かどうか私にもわかりませんが、「やっとT君を開放してあげられた」という気持ちのほうが強いのです。

 T君は私たちの二番目の子供で、小さい頃から元気でおちゃらけたキャラクターでしたが、あまりわがままや強い自己主張をしないで大きくなった気がします。
幼稚園の時には外廊下にある下駄箱に一人座り、空をみつめながら「空はいいなあ、ぼくは空をとびたいんだ」とつぶやき、「T君は詩人ですね」と先生からお便り帳に書かれたことがありましたっけ。
 そんなT君も思春期に入ると予想不可能な行動をとるようになり、私を悩ませました。中学校の登校時に道草をしてとんでもない時間に登校したり、放置自転車を乗り回し警察沙汰になったり、(盗難届が出ていたのです)高校受験のときも塾を何度もエスケープして遅くまで行方がわからなくなったり。高校に入ってからはここには書けないようなこともいろいろとやってくれました。
その都度、どうしてそうするのか聞いてはみるものの本人にも答えられない悶々としたやりとりが続くだけでした。

      子に諭す 青春論を 若き日に

             我持ていれば 違う人生

過ぎ去ったからこそわかることはたくさんあります。
その最中に結果論を人から言われても反発するだけなのはわかっているのに親は先回りして言ってしまうのです。

自分から話す事はほとんどなくなったある日、その日T君がみた映画「ダンサーインザダーク」の話を熱く語りだしたのです。突然に。
「お母さんも観たほうがいいよ、でもちょっとヘビィかな」
それがきっかけだと思うけど違ってたらごめんね。
少しふっきれたような顔になり、「大学に行く」と言い始めました。
なにかが少しT君のなかではじけて「何者かになりたい」と思い始めたような気がしました。

1年目の大学受験の挑戦は残念ながら失敗。浪人をすると決めた春にも一悶着ありましたっけ。
高校の卒業式も終わり、いつまでたってもいつもの仲間とけじめのない行動をするT君に私も夫もキレました。
「誰かと一緒でないと行動できないのか」「一人で考えて実行してみろ」と・・・。すったもんだの一夜があり、夜明けとともにT君はリュックを背負って一人旅に。
途中、神戸のおじいちゃんの家に寄ったものの仙台から南下して下関まで。折り返し裏日本を北上し新潟まで。そして山越で仙台へ。青春18切符を使っての5日間の旅でしたが、後日談では死にそうなくらい怖い思いや、寒い体験をしたそうです。

        一人旅 青春18 にぎりしめ

              少年からの 旅立ちの春

       “萩にいる” おとなになる旅 始めた子

              桜と一緒に かえっておいで

安全な日本とはいいながらも宿も決めずに送り出し、顔をみるまでは心配しましたが、桜前線とともに帰ってきました。

それが二度目のきっかけかな。違ってたらごめんね。
少したくましくなって受験勉強に取り組み始めたね。

T君とモラ

そして秋。
受験校をあれこれ選んでいるときに「僕、農業をやろうかと思うんだけど・・・」って。
「ノウギョウ」ってあの農業?あれあれ・・映画監督になりたいんじゃなかったっけ?
私も夫も目がテンに。でも夫はなんかうれしそう。
私の夫は海洋生物の研究者のはしくれです。陸と海の違いはあれ、同じ系統の学問を学ぼうとする息子に「それでよし!」と心の中で言ったことでしょう。
私は・・・、T君特有の優しさゆえの選択ではないのかとちょっととまどいました。
二人だけのときに「ほんとうに農業をやりたいの?」って確認したくらいですから。
そして2月。めでたく希望の大学に合格し、旅立ちのはこびとなりました。

合格だるま

親は子供に過大な期待をいだいてしまうものですが、娘のIにはいつも「お母さん、Tにあまり期待しないほうがいいよ、あの子はなんか考えてる風にみせてるけど実はなあんも考えてないんだから!」といわれます。
私の期待はただひとつ。
小さいときに思ったように、T君だけの空をみつけてはじけた笑顔で空をとんでほしい!

さあて!T君プロデュース「青春編」が始まるね。
お母さんも一番後ろの席で観せてもらいますよ。

                       (2004年4月6日 記す)



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