2007/01/18(木)00:31
【敬愛なるベートーヴェン】 2006年・英/ハンガリー
■原題 COPYING BEETHOVEN
■監督 アニスカ・ホランド
■出演 エド・ハリス/ダイアン・クルーガー/マシュー・グッド
■ストーリー
1824年ウィーン。"第九"の初演を4日後に控えたベートーヴェン(エド・ハリス)のアトリエに、作曲家を志す若き女性アンナ(ダイアン・クルーガー)が、コピスト〔写譜師:作曲されたモノを譜面に写す職業〕として訪れた。期待に反し、女性のコピストが来たことに激怒するベートーヴェンだったが、徐々に彼女の才能を認め、"第九"の作曲を支える存在となる。
"第九"が生み出されたのを背景に、孤高の天才音楽家と架空の若い女性との
交流を描いた音楽ドラマ。
冒頭のシーン、アンナを乗せた馬車が、美しい風景の中を駆け抜け
彼女の中で何かが込みあがり、それとともに浮かび上がる曲。
美しく叙情的なシーンに、思わず引き込まれ、胸が苦しくなってしまった。
彼らが出会った当初、ベートーヴェンが女なんぞにと見下し、写した楽譜の間違いを
「それみたことか!」と指摘した時、アンナが臆することなく言い放ったセリフに、ニヤリです。
ようやく自分を真っ直ぐに見返し、正直に言葉を発する相手が現れて
言い返されたはずなのに、妙に嬉しそうなベートーヴェンが、ちょっと可愛い。
シーンごとに合わせた曲も素敵でしたが、あえて曲を流さず
人の声や教会の鐘の音、鳥の羽ばたきなどが洩れ聞こえてくるシーンも良いわ。
とは言え、何といってもこの作品のメインである、10数分に及ぶ第九の演奏シーンは
とにかく圧巻で、ベートーヴェンと、彼を補助するアンナと、彼の曲を奏でる者たちとの
官能的でもある一体感が、たまらなく素敵で、心を揺さぶる。素晴らしい。
音楽の力って偉大だわぁ~と思わずにはいられない感覚、自然と涙が。
放蕩甥っ子カールの心にも、届いたわよね。
そして、演奏後の大喝采で、映画の幕も下りるのかと思えば。。。
作品としては架空の物語ですが、その後半部分があるからこそ
真の芸術家であり続けるベートーヴェンの、偉大さと痛みを
本当の意味で知ることの出来る作品になったのかと。
冒頭での、馬車の中でのアンナの表情が、ここで生きてくるんだなと。
ベートーヴェン役のエド・ハリス、内に爆弾を抱え、生き急ぐようにそれを発散する。
真の芸術家を表現し、それを見事に演じきってしまうあなたも、もはや神の粋?
ジャクソン・ポロックを演じた時にも、本人なのかと見紛うほど。
今回も、傲慢でワガママでパワフルで、それでいて繊細なベートーヴェンになりきり
その演技は鬼気迫るものがありましたわ。さすがでございます。
お尻ペロリンもご愛嬌。(笑)
アンナ・ホルツ役のダイアン・クルーガー、気品のある凛とした美人。
演奏シーンでの曲と同調し恍惚とした表情に、こちらもウットリでございますわよ♪
架空とはいえ、こんなに綺麗なお嬢さんが、あんな偏屈傲慢オジジに
献身的に仕えてるっていう設定は、ちょっとアリエナイ感が漂いますが。(笑)
この作品、本当は年末に観たかったんだけど、御用達映画館の上映開始は1月6日から。
都内では既に開始されていたんだけど、ちょっと行く手間を惜しんでしまったのよ。
観終わった後、惜しんだことをとても後悔。
実のところ私、お恥ずかしながら第九を最初から最後まで聴いたことがございません。
この映画観たら、是が非でも聴きたくなってくるじゃない?
年末だったら、お決まりのようにテレビでオーケストラの放送があったわよね。
難なく、この欲求を満たしてくれていたのにぃぃぃ~~と。
ま、熱が冷めないうちに、オケのDVDでも借りよっと☆
できれば今年はコンサートで、生の第九を体験したいわ♪
『敬愛なるベートーヴェン』公式HP