2012/01/17(火)11:29
『困ってる人』を読む
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を図書館で借りて読む。
現在の会話文体で書いているだけに読みやすい本だった。
総論としては、興味深い本だった。
私も難病であり、私の病態よりは重そうなこともあろうが、日本の社会保障の貧困さについても触れられてあり、その点、同じ難病闘病記系の本でも
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より共感を持てた。
文体については、かなりくだけた現在の会話文体(ふざけが過ぎるか、と感じられるところもなくはない)だけに数年後には古びて感じるかもしれないと思った。
また、著者には論理的な文章を書く能力もあるはずなので、社会保障の貧困さ、とりわけ社会保障の谷間と言われる難病対策制度については、今後、きちんとした文体でまとめて欲しいと思う。
病院や医師との関係では、主治医に電話で連絡を取れる体制が取れているというのは、うらやましく感じた。
多発性硬化症の世界でも、某ホットラインはあるものの、私は遠慮があり、大学病院の主治医の連絡先は聞けていない。
これは、著者の病気の難解さや主治医との関係もあり、連絡を取れる体制を取ったのかもしれないが、私も遠慮せず聞くべき問題のようにも感じる。
著者は、病態や治療の内容、医師との会話等も書いている。
かなり赤裸々に書いているようにも見えるが、実はまだまだ書けないようなこともあるのでは、とも思う。
私自身、このブログで書けない(私自身が書く気=公開する気にならない)ことは多くある。
公開できる部分は、自分の困難さの一部ではないかと思う。
書いている内容には愚痴・不満等々もあり、見苦しく思う人もいるかも知れないが、理解できるところがある。
入院しないと分からないが(特に完治がなく先が見えない難病の場合は特に)、精神的な安定は、身体的な安定に大いに影響される。
私自身、初入院の時はかなり精神的に不安定になっているし、自分の過去の日記を思い起こしても、病態が安定しないと精神的に安定してないような気がする。
本当は、医療現場に人員の保障や診療報酬などへの加算等が必要なのだろうと思う。
「心理的支援は診療報酬、福祉制度、介護給付などには全く評価されていない.(中略)生活設計などへの悩みを、疾患の特性を理解したうえので傾聴できる場と、職能が医療のなかで評価・補償される社会が望まれる」(「MS,NMOの医療・福祉の課題」,深澤俊行他,『BRAIN MEDICAL』2010.12,VOL.22 NO.4,メディカルレビュー)
身体障害者手帳や難病治療費の公費負担制度の申請、障害者支援制度の利用については、事実、分かりにくい。
また、医師が難病の公的補助制度について詳しくないのというのは、残念ながら私も同感。
他には、この本ではあまり書かれていないが、一人ではどうしようもないということがある。
(膠原病の患者会に入ったという記述があったように思うが)
この本だけでは難病の啓発はできても、政府の難病・障害者対策は改善されない。
一定の要望する人数がないと、政策に反映されないのが現実である。
その意味では、JPAとか患者会とかの団体の活動がピクアップされないといけないような気がする。
難病患者は、個々の病気に対しては絶対数が少ないだけに、集らないと力にならないと思う。
著者は難民支援をしていたが、自分が難病となり、それがきっかけで日本国内であたかも難民のようになった、というようなキャッチコピーを見聞きしたような気がする。
しかし、実際は、もともと難病患者は福祉の谷間と呼ばれる状態にあったのであって、この本でそれが分かりやすく示されただけだと思う。
程度の差はあるが、特定疾患医療受給者票の対象者679,335人、小児慢性特定疾患治療研究事業10万7,894人(以上、公費負担のある難病だけであり、実態はもっと多い)が、同様な立場にあったと思う。