声優さんのタイプについて
主役の張れる個性派。きわめて特徴的な声と印象に残る台詞回しを持ち、一聴して即、その人だと判別できる。ベテランに多い。個性が威力を発揮するのは主にアニメであるが、出演は外画ドラマとアニメの両方で相当数をこなす。時に、アニメで起用される場合に、どんな役であっても、声や台詞や演技をほとんど変えないで、その声優自身が確立した持ちキャラを当てはめるということがある。これはキャスティングの段階ですでに意図されていて、視聴者はそれに乗せられる。時として別作品での役柄のクロスオーバーまで発生する。八奈見丈ニが、まったく別のアニメで、あたり役のタイムボカンシリーズのボヤッキーの名台詞の「ポチットナ」という掛け声とともになにかのボタンを押したときには、おそらくかなりの数の視聴者がTVの前でこけたに違いない。おそらくこういう役者さん達は、時として台本を無視した演技とアドリブを連発しているにちがいない。演出家や音響監督もそれを求めているのかもしれない。その声優が長年の実績で構築した、独特のキャラクターそのものがファンを魅了しているため、すべてが許されている雰囲気だ。特に、ときおりやってくるブームがあって、その間は同じ傾向のキャラクターを狙った配役がつづき、聴く側がいささか食傷気味になっても、その間に固定のファンがついて、長く愛でられる。ブームが去って普通の演技に戻しても、演技力が高いので、製作現場で重宝がられ、常にレギュラー級で、台詞も出番も多く、重要な役が回ってくる事が多い。長い年月、継続的に仕事が存在する。二枚目半から三枚目の名脇役に多いタイプ。若本則夫、八奈見丈二、たてかべ和也、玄田哲章、大塚周夫、青野武などがそれに相当する。最初2枚目で、そこから崩した2枚目半で人気を博す、納谷吾郎、故山田康男なども挙げられようか。もちろん役者として最高レベルの職人域な人達であるため、アニメ以外のジャンルでは、まったく普通の演技で洋画吹き替えや海外ドラマ、はてはナレータまでも数多くこなす。ギャラ・人気ともに不動のトップクラスの声優さんである。ところで、実は中堅でこの位置をうかがっているのに、真っ先に高木渉の名前が浮かんだ、山路和弘もこの仲間であろうか?外にも、いくつか名前を挙げようとするのだが、印象深い声で主役級の声優さんの名前が思い浮かばない、もしかすると居並ぶベテランに個性を奪われて、今は平凡な脇役を数多くこなしながら、虎視眈々とこの名脇役の座を狙っている方々が沢山いるのかもしれない。世代交代が進めば浮上してくる人も居るだろう。尚、分類に困った方々が居る。例えば、大塚芳忠、大塚明夫、石塚運昇など、常になにかの重要な役をこなし、時にめいっぱいかっこいい主役もこなす方々である。低めのバリトンからバスの音域で、弦楽器を震わせるようなすばらしい声質である。ひと声でも聴けば、すぐにこの人だと判別できる。なお大塚明夫の父の大塚周夫の方は声質が高くしぼった感じで、よくチャールズブロンソンの声をアテていたのでまちがいなく個性波代表格の一人である私の子供の頃からの印象はねずみ男である。お年のせいか最近ではめったにご出演がないのが残念である。息子の明夫の方がいい声で、最近は本当に売れっ子、大変な仕事量である。主役の張れる印象派。役者の声質として、つぶしただみ声が出ず、生まれつきの才能として美声が備わった声優さん。ちょっと聴きにはすごく良い声な役者さんは星の数ほどたくさん居る、逆にどの役者さんも声優業を生業にしている人はみんな作れば恐ろしく良い声を持っている。しかし、実際にマイク前で、あらゆる場面、あらゆる演技をとおして、とことん美声を貫き通しきれる役者は希少である。現実にはそれほど数は存在しない。たいていは叫ばしたら声がにごったり、トーンを変えたら響きが悪くなったりして、一番イイ声だけが美声である場合が多く、むしろそれぞれの声質の個性で役をこなしてゆくのが普通である。この印象派はとにかく良い声であり、その声質で一般に覚えられている。一方、この希少な真の美声の持ち主は別の不幸を宿命として背負い込む、彼らは、ギャグ路線であっても役者として面白おかしく楽しくこなす十分な演技力があるにもかかわらず、なかなか役の中でその実力を見せるチャンスが少ない。美声の役者が半端な脇役を演じても、逆に声が良すぎるせいで、観る人に、コレは何かの伏線か?このキャラはどこかで重要な役回りをするのか・・というようなよけいな勘ぐりや不信感を与えてしまう、本当にサスペンスや推理ものであると、ネタバレになってしまう、そういった損な宿命を背負っている。使いまわしの、ほんの端役で出る場合には、よほど気を使って声のトーンや響きが控えめになるように落とさない限り、普通に美声でしゃべってしまうと、聴くものに本筋とは関係ない余分な印象を与えてしまいかねない美声である。ただし、よくよく日常生活を観察してみると、会社なんかで、普通のそこいらのお兄さん(おじさん)で、容姿も並なひとが、あたらいい声なのに遭遇することがある。真実は小説より奇なりである。本物の演技力が備わっていない場合には、数やるとすぐに類型的になってしまい、視聴者や演出家音響監督が、その実力の底を簡単に見抜かれる。その結果、このポジションを10年以上続けられる声優の数は本当に少なく、沢山の方々が、現れては消える。逆に生き残っているのは、本当につわもの揃いである。過去には故富山敬、いまだ現役の神谷明、野沢那智、矢島正明、若山源蔵などがその典型であろうか。しかし、ここに挙げた、美声2枚目看板の声優さんたちは、さすがにかなり高齢化が進んでいて、実際には今の若い2枚目はできないので、ショーンコネリーを若山さんがやりつづけるように、吹き替える先の俳優さんも、過去長2枚目ですがいまはおじさんもしくはおじいさん、という配役が増えている。ただし、矢島正明に限っては、その個性をナレータに生かしているので、いまだに2枚目正統派の看板をおろしていないと思う。この超べテラン2枚目印象派の後継として、もうすこしでこのポジションという位置には、実は中堅にたくさんの美声声優がひしめいている、ベテランにさしかかった堀内賢雄をはじめ、キャリア20年以上という中堅では、田中秀行、井上和彦、成田剣、などなど・・・・中堅実力派には、山寺宏一、井上倫宏、藤原啓治、平田広明、宮本充、小山力也、森川智之などが居る。別段、彼らが似た声をしているわけではないが、彼らはかなりの割合で最近の映画の主役の座を争っているし、主役級の座を分け合って共演している。すでにベテランになりつつある堀内賢雄は別格として、中堅では山寺が、主役獲得率で大きく一歩抜け出している。その抜群の演技力と声の七変化によるものである。ドナルドダックからウィルスミスまでを整然と吹き替えるのであるから脅威である。上記の面子は主要な2枚目ハンサムの主人公役を得る率がきわめて高い。平田、藤原、宮本、森川は、結構な頻度で同じ俳優で競うことが多い。この中から確実に、先のベテラン2枚目の後継者となってゆく。今後10年ぐらいの間は、殿堂入りのためにポジションを争い合うことと思う、なるほど、吹き替えファンがキャスティング発表を見るのが楽しみなはずである。 女声、子供声、色声。まさに字のごとし、さまざまな役を必要とするので、こういった演技派でなおかつ個性的な、女声や子供声、妙に色っぽい声、だみ声、などの個性声の声優さんは必須である。美声の持ち主でも音域によって使い分けられるが。役は必ず回ってくる。石田彰、結城比呂、浪川大輔や宮田幸季などは、変声期まえの綺麗な少年声が出せる。緑川光も独特の甲高さを持つ声だ、若手の主人公もできるが、色物声にも向いている。少年声を担当するやり手ベテランの女性の声優さんと役を争うという、ちょっと異質なポジションでもある。ヒーロー声、漢声。演技力があれば生き残れる。とりたて良い声という印象を初期には与えないが、実際に聞き込むと味わいがあり、声質はやはりすばらしい。一番幅広い役どころをあたえられる。ただし、個性が薄い分、かぶっている役者が多く、本人の実力より運に翻弄される、関係者配役を決めるポジションの人がその役者を覚えている場合に役得となる。たいていはオーディションでうまく配役とフィットでき、さらに個性をアピールできた場合は主役級に抜擢されるチャンスがある。また加えるに叫びや歌がうまいと一歩抜け出せる。一番たくさんの層の厚みを持ち、ひしめき合う階層である。声指名は少なく、常に戦い勝ち取る役で生き抜くため、ここにも実力者が多くひしめく。没個性まったく印象がない声であるにもかかわらず、抜群の演技力を持つ役者さん。絶対に必要な配役。かならずどこかのスタジオにいて、つねに何かの端役をやっている。その他大勢の常連。大きな役はめったに回ってこないので、気楽であり、楽しく末永く続けている人が多い。以上、男性声優さんの名前をいくつか挙げてますが、まったく狭く乏しい知識からの引例なんで、その点をご了解ください。というわけで、声優さんには何種類かタイプがあると思うので、自分なりに勝手な分類を試みた。今回、こういう風に分類することに、特別意味があるわけではないが、なんとなく、私の考えをまとめやすいので、やってみることにした次第である。