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カテゴリ:アニメ
アレックス・ロウ
ラストエグザイルの中で、ある意味この人だけが突出した重い十字架と宿命を背負わされていたように思う 最後にその魂は復讐の成就によってわずかに救われたのかとも思える演出ではあったが、やはり彼は現世では救われることが無かったという残念さを、物語を観る者に与えた 結局のところ、誰一人アレックスの怒り・苦悩・悲しみは理解していなかった、一番そばにいたソフィアでさえも、最後まで彼の心の傷の深さを完全には理解していなかったように思う ただ、この救われない魂をひきずった悲しい宿命の男を生涯愛したがゆえに、ソフィアもまた、救われない宿命を生涯背負うことになってしまうのだが、繰り返しアレックスを襲う恐怖と悲しみの記憶のりプレイによって、物語は彼が負った傷の深さ、10年を経てもなおその生なましい傷のその様を示唆し描いてみせる おそらく、彼の心をさいなむ苦悩から、彼の魂を救えるものが復讐という目的成就以外にないのが、物語の必然だったのかもしれない 己が魂の救いを求めるからこそ、悲劇の記憶から逃げるということを拒んだ結果、生々しい記憶がリフレインする日々だったのではないだろうか 他の誰でもない自らの手で、自らの宿命に決着をつけることを目的として生きる以外には、己が正気を保つ選択肢が彼にはなかったと考えるべきか 彼の精神をさいなみ、彼を絶望のどん底、自己嫌悪と不条理の淵へと落とし込む悪夢の出来事、 エグザイルとの遭遇 復讐の怒りを持って、毎日自身の正気を手繰り寄せつづけた、驚くべき気力の男、アレックス・ロウ これほどまでに苦しんでいながら、周囲にはその片鱗すら見せず、冷徹なまでに指揮をとり任務を遂行する強靭かつ鋭敏な知性と判断力、何も投げ出すことなく、発狂することもなく、いささか自閉症気味ではあったが、運命を自分の力で切り開いた彼の生き様は たとえその動機が復讐と自己の魂の救済であったとしても観るものの心を打った ある意味でアル以上に、この物語のカギともいうべき人物であり、重要な存在であった アレックスの下した判断が、結論からいえばすべて人々の運命を左右していたのだから クラウス以下他の登場人物たちの判断は運命の流れの中のひとつの選択肢でしかなく、物語の展開を大きく動かす部分はつねに、アレックスの行動と判断が左右していた 皇女ソフィアですら運命に従ったまでであり、最後はアレックスの意志に従ったともいえなくも無い 最後、その魂が開放される瞬間まで苦しみつづけた彼が、 最後の最後につぶやいた言葉 空へ 彼が言いたかったのは、俺を空へ連れて行け、だったのか、空へ帰ろう、だったのか?屈託無く、よどみない純粋なトーンで放たれる最後の台詞は、演じた声優さんの解釈も、そして演出家の解釈も同じだと思う シルバーナ艦長アレックス・ロウではなく 純粋に空を愛し、飛ぶことに喜びを求めた青年パイロットだった頃のアレックス・ロウ 背負った重い宿命をすべておろし開放された瞬間に漏れた 心の言葉 何者も寄せ付けない無限嵐のグランドストリームを越えるため、 2機のヴァンシップは、無謀にも2人の子供と妻を残し 和平を願う人々の思いを背負って決死の飛行に飛び立った そこで何が起きたかは物語の本編を見ていただければあきらかだ 一人生き残ったアレックスは、以来10年間、 誰に対しても心を開くことが出来ないまでに打ちのめされ失意のどん底へ沈んだ 彼の負った心の傷は、へし折られたプライドと失った大切なもの、 愛、あこがれ、尊敬、希望、人々ののぞみ、自らの未来、すべてであった あまりにも純粋でまじめでまっすぐな若者であったからこそ、心底傷ついた彼の心は、その直後に見た、傷口に塩を塗りこまれるような体験を持って永遠に凍りついた あの瞬間心のそこに焼きついた、彼の悲しい運命をせせらわらうマエストロ・デルフィーネの顔を記憶に刻み付けて 物語では語られてはいないが、あのエグザイルと遭遇の悲劇はおそらくデルフィーネが仕組んだものであり、彼女がエグザイルを先導して、その防衛機構を稼動させ、和平の任務を阻むために彼らの前に立ちはだからさせたことを、物語は示唆している だからこそ、それを本能で感じたアレックスは、デルフィーネに対する復習の情念を生きる原動力とし、シルバーナの艦長として立ったに違いない 魂が救われないアレックスのそばに居て、 ソフィアは彼の副官としての任務を十二分に遂行することで彼女の思いを示していたに違いない 彼もまた、彼女がそばに居てくれることは、 実は必要以上に己が心を苛め荒むのを防ぎ、魂が救われていたに違いない 運命がそれを受け入れることを許さないであろうと解っていたからこその拒絶の態度であったとしても 心の底では、彼女の愛を受け入れ、彼女を愛していたに違いない こうなるとやはり、どこをどう見ても、アレックスが一番救われない人 それがラストエグザイルである 台詞や出番こそ少なかったが、エグザイルの物語の真の主役は彼だったのではないかと思う 最後に、画面で動くアレックスの絵にあまりにも上手くはまり込む声優さんの演技に 心底感銘した とくに秀逸だったのは戦闘シーンの冷静さ知性と俊敏さをすべて感じとらせる声のトーンと抑揚 そして最後の最後に放たれた言霊 空へ この屈託なくよどみの無い一言が もっとも深く私の胸に突き刺さった 物語のすべてを集約した言葉だった ラストエグザイル、ここ10年私が見た中で、もっとも印象深いアニメ作品である <終> 以上 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.10.28 14:03:20
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