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シルバーナの船室 (ペンギンの○○です!)

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まいける2004

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2005.01.06
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カテゴリ:BL
ちょっと、短編小説。でも激しい描写はなしね(笑)

岩城が帰宅したのは深夜だった。
こっそり入ったつもりだったので、音を気にしながらドアのカギを閉め、そっとチェーンを引っ掛けた。
そのとき、後ろから声がした。
『おかえりなさい、岩城さん!』
『あぁっ、まだ・・・起きてたのか?』
香籐はいたずらっ子のように微笑んでいた。
『うん、電話ではあしたの午前中かもって言ってたけどさぁ、岩城さんのことだから、
きっと無理してでも、今日帰ってくんじゃないかなって思って、台本読みながら待ってた』
ランニング姿の香籐は、かなり延びた髪を無造作に掻き上げた。
役のためだろう、無精ひげもすこし伸びている、やさぐれた青年の役なのかも知れない・・・
岩城は香籐の全身を見回し、まぶしそうに目を細めた。
(1月ぶりか?なんだかんだでそんなになるのか?)
久方ぶりに見る香籐は、本人が電話で言っていたとおり、役のためにここ数ヵ月取り組んだトレーニングの成果が出ているのか、全身がかなり引き締まって見えた。
うっすらと汗ばんだ上半身が、京介の心の芯に淫靡な疼きを覚えさせた。
『香籐、いい体つきになったな・・・』
『あっ、そう、これ、岩城さんに会えなくて、やけっぱちで、ずっとトレーニングしかやってなかったから、
それより、まだ、洋二って呼んでくれないんだね・・・
ま、でも、いいや俺も岩城さんのこと、京介って呼べないも・・ん?』
狭い玄関で、壁によりかかりながら香籐がそこまで言ったとき、
唐突に、岩城が香籐に体をかぶせ、自らの口で彼の口を塞いだ。
静かな長いキスが、二人の会話をとぎらせる。
唇をあわせる卑猥な音が、遠くでかすかに聞こえる車の音と対比して、熱く溶け合う吐息となって二人の耳元でこだました。
二人はしばらく、そのままの姿勢で重なっていた。
『岩城さ・・ん』
『ああっ・・・』
無造作に、靴が脱ぎ捨てられた。
閉まる寝室のドアの後ろで、放置されたカバンがパタンと音を立てて倒れた。
主を失った居間の、開け放たれたベランダの窓を通して、遠くかすかに
どこかの部屋から漏れる、おどけた調子の深夜番組の声が、意味のないギャグを連呼していた。
初秋に向かう、涼しい一陣の風が通り抜け、居間のレースのカーテンを大きく揺らした。

久しぶりの激しい情事の後、
二人はいつしか、死んだように眠っていた。
午前4時の起床の目覚ましが鳴ったとき、
否応なしに現実の世界へと先に引き戻されたのは香籐だった。
(あっぶねぇ~先に目覚まし仕掛けといて正解だったよ・・・俺、準備いいよな・・・へっへっ)
『何時に津田さん来るの?』
岩城の声は、まだ半分眠っているのか、かすれていた
『うん、6時なんだけどさ・・・電話で話したよね、ロケ、今日から現地で泊り込みなんだ、近所なんだけどさ。
俺、お泊りの準備しなくっちゃ、岩城さんは疲れてるんだから、寝ててよね』
『・・ぁ・・・う・・ん・・・』
岩城の返事はすでに夢の世界のつづきのようだった。
昨晩、といっても、つい数時間前か、香籐の激しい求愛行為に対して、
長期ロケでの疲労を訴えながらも最後まで付き合った岩城。
香籐はその美しい寝顔に再び欲情しそうになる自分を抑え、
かすかに寝息をたてる岩城を起こさないようにと、気遣いながら、
そっとベッドを出ると、バスルームへ駆け込んだ。
(っちくしょう、今日は大勝負な仕事なんだ、でも、岩城さん・・・・くぅ~)
熱いシャワーが眠気もだるさも吹き飛ばしてくれるようだった。
(もしも最初に、岩城さんがロケで1ヶ月も帰らないなんて判ってたら、
俺、絶対スケジュール調整して、途中で合いに行ったのになぁ・・・だまされたよまったく。
まあ、半分は天気せいだから仕方ないんだけど、監督さんもこだわり性見たいだし、
これだら夏場の南の島のロケは大変なんだよな・・・
さすがに疲れてるみたいだったなぁ・・・ちょっと痩せたみたいだし・・・)

香籐は、数日分の着替えを準備すると、マネージャが迎えに来るまでの時間を
岩城の帰宅で中断していた台本チェックにあてた。
今日の台本ではなかったが、話の先を少しでも多く把握しておくことは、その日の演技プランにも影響を与える。
寝室では岩城がぐっすり寝入っているので、香籐は声に出して台本を読むことが出来ないため、
パントマイムのように声を出さないで口をパクパクさせてセリフを読むという、得意技を使うことにした。
程なくして時間に正確なマネージャが、約束の時間きっかりにインターホンを鳴らそうと手を伸ばしていた。
寸前で、香籐は、そっとドアを開けてマネージャを押しとどめた。
声を潜めて、
『津田さん、ごめん、岩城さん寝てんだ、起こしたくないから』
『あ、そうですか、ご準備は?』
『出来てます、行きましょうか』
香籐はスポーツバックを肩にかけ、そっと居間の窓を閉めて電気を消した。
(岩城さん、じゃあ行ってきます、3日で帰ってくっから、それまでのんびりゆっくり休んで、待っててよね)
香籐は音を立てないようにドアを閉め、静かにカギを回すと、足をしのばせながら離れた。

程なくして車が発進した
『へぇ、岩城さん昨晩お帰りに?間に合ったんですね』
『そう、そうなの、入れ違いにならなくてホント良かったよ』
『それはそれは・・・ようございました』
『よけいな詮索はすんなよ!!』
『はい、はい』
二人は笑った、早朝の道は日中の混雑が嘘のように、スムーズな車の流れだった。

つづく・・・






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Last updated  2005.01.06 23:29:12
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