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シルバーナの船室 (ペンギンの○○です!)

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2005.02.06
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カテゴリ:映画
ロードオブザリングは、第1部の日本公開が待ちきれなくて、滞在先のアメリカで無謀にも原語で観て爆死。
用語が難しくてぜんぜんストーリィすら追えなかった。
日本公開を待って、2回劇場で観て、やっと世界が理解できた。原作は大学時代に読んでいたが20年以上も昔の記憶の遙か彼方で、詳細はさっぱり忘れていた。
DVDの通常版を買ったが、指輪のシリーズにはからくりがあることに気がついたのは、その次に時間差を置いて出たロングバージョンを観たときだった。
この監督は、劇場公開バージョンでは物語の長さを普通の映画の範疇にとどめているが、この映画の真の姿は、トールキンの指輪オタク向け映画であることが、エクステンディットロングバージョンという追加シーンを足したら3時間を超え、本編だけでDVD2枚になる代物を通しで観て初めてわかる。これを見てはじめて、指輪物語の全貌と設定とが理解できる仕組みになっている。
そう、この長編版こそが指輪の世界を懇切丁寧に作り上げた、監督さん以下スタッフがほんとうにやりたかった映画なのである。
実際の上映版で削られた部分にこそ、沢山の原作に忠実なプロットや設定が描写されている。第1部では西の地に旅立つエルフの隊列など、指輪の世界ならではのシーンが追加されている。
そして、このロングバージョンに設定説明を追加する傾向は、第2部でさらに拍車がかかった。
アラゴルンの出生や実際の年齢がエオウィンにばれるシーンなど、劇場公開でカットした理由は本筋に影響がないからなのだが、物語としてはきわめて重要な設定背景である。
実際に、エクステンディットではちゃんと80才を超えていること、先の戦争でローハン王が少年時代にすでに先王とともに戦った剣客であることなどが語られる。それはヌメノールの末裔としてのエルフとの関わりなど、原作を読んできたものだけが、そうそうとそうなのよと納得する自己満足なシーンでもある、だって80才を超えているのに見かけは若いし、他の普通の人間となぜ違うのか、しかも同じ人間なのはなぜなのか等、くどくど設定を説明していたら大変なことになる。そもそもこの世界の成り立ちとエルフと人間のかかわりを説明するには、説明シーンだけで2時間ぐらいの時間を取らないと収まりがつかなくなるだろうから、たとえほんの数秒のシーンでも劇場公開の本編には入れられなかったんだろう(笑)。

私は、指輪世界をもうすこし詳細にキャチアップするため、第3部公開前に再度、指輪の小説版を全部読破し、そして第3部に望んだ。
そう、それだからこそ、待ちに待った第3部の劇場公開版だけで、このとてつもなく壮大な物語を終わらせるのが、最初から絶対に無理だと判っていた。
そんなわけで、劇場公開版に愕然とするほどの驚きや挫折感は正直なかった。ただやはり、ホビットにかかわるエピソード以外をすべてばっさりと切った事実を認識させられて、製作者の潔さには敬服したが、同時に言いしれぬ寂しさを劇場で味わった。この裏にどれだけ沢山の物語が隠されていることか・・・と。
だから公開版を何回も観たいとは正直思わなかった。私の中ではすでにというかもはやこの3部作を終わらせる為、こののどの渇きにも似た焦燥感を収め自身の物語への欲望を満足し納得させるためには、ロングバージョンを観るしかなかった。そして、ついに待ちこがれた第3部が先週到着。

これこそが、劇場でみてこれはダイジェストねと心で思た指輪3の本編。
そして・・・全部見終わるのに5時間近くかかったが、感激だった。
よくもまあこれだけのシーンをカットしてしまったものだと思えるほどに、また逆によくもまあ、これだけアラゴルンにまつわるエピソードが追加できたものだと、まさしく、これが原作にもっとも近い形のほんとうの指輪だと思った。
あえて、サルマンとグリマーの取り扱いは原作とは異なるのを許容せねばならないし、アルウェン姫の双子の兄たちはにこにこ笑って並んでいても決して名もでなければエピソードに関わることも無かったのが、映画版の残念な部分であるが。
サルマンは原作では最後にホビット庄まで悪さを仕掛けてくるので、この作品としてこういう決着の付け方をしないと、(もはやこれからさらに続編というはあり得ないので)仕方がないと思う。それにしても、サルマン役のクリストファーリーがぶち切れたのも無理がない、熱演シーンをすべてばっさりと公開バージョンでは切られたのだから。

3部作を振り返るに、物語としては、第2部の砦戦が鳥肌ものの仕上がりだったのに比べて、どうしても筋を追った第3部は、全体に話が散漫で、一つ一つのエピソードに深みがないのが残念だ。もっとも、残念なのは、仕方がない事なのだが、帰還した王とゴンドールそのものの関わりで原作で延々と描写されている部分がまったく触れられていない事である。どうしてどこからともしれずやってきたアラゴルンにゴンドールの兵士が盲目的に忠誠を誓えるのか、ちょっと観では疑問になってしまうように思う。ローハンの兵士は2で一緒に戦ったので納得できるだろうが・・・

つぎに筋以外の話もしたい。
ロードオブザリングは音楽が大好きだ。こんなに美しいメロディを次々と、こんなにも雄大で綺麗な自然を背景にして、紡ぎ出されると、もう感涙しかない。ジーンとするシーンは枚挙にいとまがないが、第3部でガンダルフが馬でピピンと一緒にゴンドールの首都ミナスティリスの美しい城内を駆け上がるシーンの画面のアングルのすばらしさとそれを演出する音楽の美しさと勇壮さには鳥肌が立つ。何回みても素晴らしい。サントラを単独で聴いても画面が脳内にフラッシュバックして感激がよみがえる、このシーンが最高である。
第2部での砦戦を目前にエルフ軍が合流するシーンも、なんとも言えない雰囲気をもった記憶に残るシーンだが・・・

次に、この映画は先にも述べたが、全編とおしてカメラワークが素晴らしい。アップと引きのバランスが抜群、日本のチョイ前のアニメの影響もけっこう受けていると思う。とにかくアングルや動きの描写が、これほどまでに完璧で、観る物の想像をかき立てる作品は他にない。
そして色調である。
総てのシーン、1コマたりとも手を抜かず、すべてに気配りとこだわりが感じられる。これでもかという意気込みで、色調もトーンもコントラストもいじられている。
だれもいままで見たこともない、エルフやホビットやオークが棲む幻想世界の色調と配色、だれも未だかつて観たこともない綺麗色彩とコントラスト、そしてまさに誰も観たことがない夢の世界のような光の使い方。
こんなに細部まで凝って手を加えられた、アニメのような実写に出あってしまうと、安易に作られ、ザルのようにお金だけつぎ込んだハリウッドの大作映画が陳腐に映るのも無理もない。
この映画にアカデミーを与えなくて、いったいどんな映画にアカデミーを与えることが許されるのか、と観たときから思っていたので総なめだったときは逆に興奮したし感動した。よかったよ、ハリウッドも捨てた物じゃないと、良い物を良いと評価できるシステムがまだ残ってたんだと。
それにしても気の毒だったのは上演年がかち合った他の映画達である。





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Last updated  2005.02.07 01:07:58
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