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カテゴリ:声優
タメぐちとかタメが効くとかタメの演技とかいいますよね
このタメって? タメぐちってのは、本来なら敬語を使う場面、親しき中にも礼儀ありの状況で、なれなれしい言葉を使うこと?マイナスな意味ですが、 スポーツ系の用語でのタメが効くというのは、たとえば野球でバットを振るときに、もっとタメて振らないとって解説の人が言うのは、腰のタメみたいな意図で、粘りというか重みがある(といっても、鈍重とは異なるニュアンス)で力を十分蓄えてタイミングを計って(やみくもにつっこまないで)打つ、そういうのがタメの効いたバッティングとかタメが効いたフォームとか、投手でもタメが効いた投球って言い方しますね。 でもって、タメの効いた演技というのは何か? それはスポーツに近いニュアンスですかね。上っ面ですべっていない、心の奥底から出る感情を上手くコントロールしながら、観客の反応する感情の昂ぶりまでもある程度計算しつくし、舞台なら身振りも含めて、たっぷりと間合いをとって観客の心をつかみまくる演技ですね。それをまさに、先のガラス仮面第44話での真澄の演技(あわわ)じゃなかった森川さん演じる真澄に感じたわけです。 お話は今まさに、ついに紫のバラの人がぼろを出してその正体がマヤ(あんた一人が幾多のヒントをぜんぜん拾わずボケボケだったのよ)にばれなんという、(ばれたと言い切っていいのか?)状況こそが、視聴者の大きな関心というか注目の核心なわけで、それは紅天女候補にマヤが選ばれるという、本来の目的が主人公としてある程度はお約束な展開の本筋以上に気になる、マヤを取り巻く人間関係の核心にかかわる部分なので、すっかり話題の中心といって間違いないでしょうから。 いやぁ~ぶっちゃけ(急にここから砕けた文体)夕べガラスの仮面をここ1か月分(#41-44)をまとめて連続再生していたんですよ、このあたりから真澄とマヤのやり取り顕著に増えてるし、真澄はモノローグも含め台詞量激増だし、マヤはすっかりツンデレだし・・・ それで、つくづく見ながら、このところの真澄の演技に、特にタメがあるなって感じた次第で・・・ 彼って、物語り流れとは関係ない次元で自分時間で動いている?真澄が出てくるだけで、周りのテンポまでが真澄の世界になっている、そこがすごいなって思ったのです。演出がそうなっているのか、アテている森川さんの間合いで、そういう雰囲気になっているのか?きっと両方であるとは思いますが・・・とにかく台詞のテンポとか間合いが、真澄なんですよ・・・これが役が立ってるという状況そのものなんでしょうね、彼が喋ってるその瞬間だけ彼が圧倒的な存在感の主人公と化す。実感。 現状のアニメの状況からすると、アテレコの段階ではコンテ絵とかカット絵みたいな状況のはずなんで、役者さんは与えられた秒数の中で台本の台詞を詰め込みながら(ときには引き伸ばしながら)掛け合いでの間合いを取りつつも、動かない(場合によっては絵ですらない)画面で精一杯状況を想像して、脚本の意図を把握して、キャラクターになりきって喋るという、アニメならではの高等テクニックが必要なわけで、よく外画から来る物凄く演技力のあるベテランさんでも、なぜかアニメになると棒読みになる方がいらっしゃるのは、この状況に慣れないせいで感情移入ができないのだと思います。外画は画面で既にあちらの役者が演技してるわけで、彼らの感情にシンクロしながら台詞を言うのと、なにもないところで時間の制約をいろいろつけられながら台詞をしゃべるというのでは大分異質でしょう。ついついナレーション調になってしまう人には、ちょっと内心で同情してしまったりもしますが・・・そう、たとえば今回(44話の中江さんナレーションと月影先生の執事の両方やってますが)執事さんの台詞がずいぶんナレーション調で、ちょっと浮いてて、逆の意味でどっきりしました。こんなに上手い役者さん(以前はもっと上手かったし、別のシーンではもっと上手いシーンもありました)なのに、なんでここでこんなにナレ言(勝手に命名)なのって、ちょっと愕然としてみたり、特にこの44話がハイレベルな回だっただけに残念でした。 森川さんのタメがどこに入っているか、ちょっと分解して考えて見ます。 森川さんは真澄の演技で意図的に使い分けています。まず台詞の緩急、声、トーン、抑揚、そして活舌。たくさんの人々の中で、マヤに向かって話しかけるシーンは、活舌良くはっきりとした抑揚で実業家速水真澄の顔で、すこし傲慢で高圧的な印象を含ませた調子。チビちゃん=マヤとだけ向き合ってひっそりと話すシーンでは、活舌を意識せず、なるべく自然な抑揚で、複雑な感情のうずをうまくコントロールしている風をよそおう声で、あるときは気持ちに素直な声で、声の勢いは抑えていながらも甘いトーンをたゆたわせながら・・・・この、語尾に向かって、力と息をすこしだけ抜きかげんにしながらも完全には抜ききらないでぎりぎりのところで余韻を保つ、ブレス系のトーンコントロールが絶品。ご本人がよくトークライブなどで、のどのところに手を当てて、ごにゅごにょごにょってしゃべってるだけなんで、のどはぜんぜん疲れないんですよぉ・・・とニコニコしておっしゃるところの(必殺技とも言えるいい男全開の)ごにょごにょトーン台詞術。これは確かに、のどへの負担は少ないでしょうが、緊張の糸を張り巡らして丁寧に心を込めて喋っているので、神経は相当疲れるのではないかと思います。昔(若いころ)は、この繊細でデリケートな語尾のトーンコントロールはあまり使わなかったですよね、チャンスが無かったのか、だんだん見につけてそれを武器としたのか・・・とにかく今では森川さんの代表的な武器になっていますね。まあ、実はアニメではそれほどこの必殺技を出すチャンスは少なくて、むしろ数々の外画でのさまざまなシーンでこの技が連発されているので、外画の森川さんを沢山見てきた方々には、普通ジャンとなってしまうのかもしれませんが・・・ そしてマヤ以外の人に喋るときには、それぞれに対するポジションを明確にした口調で、聖にはちょっと高飛車で横柄でいながらも友達のように打ち解けた調子で、紫織の前ではひたすら優しさを全面にだして好青年で、義父の前では敬意と抑制と強がりとを織り交ぜた息子の調子で・・・。そしてこれらのどれでもないのが、なんとも切ない葛藤のモノローグ。このモノローグの声が別物であるのが凄い。とにかく抑えたトーン、視聴者が真澄に対してのプラスの印象を持つ秘訣は、死ぬほど甘くて切ない台詞の嵐なのにもかかわらず、ぜんぜん気障を感じさせないで、本当に切ない気持ちが滲み出る声の抑揚、聴く人を悶絶させる魔力的な喋りではないでしょうか。 でもって、実は不思議なことに、このモノローグが意外にも台詞よりも心持ち早口なこと。もしかして森川さんの解釈だと、速水は性格的には少々せっかちなのではないだろうか?そんな気がするモノローグです。 おっと、書き出すとどんどん横道にそれます、すみません、で、どこにタメが入っていたかですが、やっぱりモノローグとマヤと二人きりの時の演技ですね。視聴者がうっとりする瞬間です。 非常におおらかでマイペースな自分が語りをする小林さんのマヤと、彼女に惹かれてとりこになっている、これまた自分の世界に浸りまくりで独自の世界を展開する速水真澄の森川の演技、この二人の周囲をからまる蔦のように妖艶に舞う月影千草の藤田淑子さんの絶妙さ。最近ちょっと影が薄い亜弓は、今後に漫画版の悲劇のエピソードが来るのか来ないのかも気になるところだが、全てを含めて、あと6回?7回?本当に面白くなってきた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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