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シルバーナの船室 (ペンギンの○○です!)

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2006.04.10
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カテゴリ:映画
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ブロークバックマウンテン

2005年 アメリカ 134分
監督 アン・リー
原作 アニー・プルー
出演 ヒース・レジャー
   ジェイク・ギレンホール
   ミシェル・ウィリアムズ
   アン・ハサウェイ
   ランディ・クエイド他

舞台は1963年、ワイオミング。20歳ぐらいの若い牧童二人が出会ったのは、雇われ羊飼いとしてひと夏を過ごしたブロークバック・マウンテン。寡黙で感情表現が苦手なイニス(ヒースレッジャー)と自由奔放な明るいジャック(ジェイク・ギレンホール)。彼らは山でキャンプをしながら過酷な自然と戦いつつ羊の面倒を見ているうちに、徐々に深い友情を築いていく。
二人がある日感情を爆発させて肉体関係を持ったことから、友情は愛情へと変化、そして短い夏が終わり、二人はお互いの生活に戻っていく。
結婚し二人の子供をもうけ、牧場を手伝いながらもつましく暮らすイニスの元へ、ロデオ生活に疲れ流れ着いたテキサスで裕福な美女と結婚したジャックがたずねたのは、二人があの山で過ごしてから4年後。
二人の秘めた心が一気に爆発、それから年数回の限られた期間だけ、二人きりで山へ家族には釣りと称して密会を重ねていく。
年月を経て、感情表現の苦手なイニスの家庭は崩壊し、愛する娘への仕送りのためにひたすら過酷な労働に耐えて暮らす日々を重ねる。一方のジャックも、己の名誉を捨てた婿の生活を必死で絶えながらも、イニスとの逢瀬だけを夢見て暮らしていくうちに20年の歳月が流れる。
人々の目を盗み密会することでしか愛し合えない関係に絶えられないジャックは以前から何度か二人で牧場を経営する生活を始めることを提案し続けていたが、古い慣習しか知らない、自分を押し殺した働くだけの生き方しか選べない不器用なイニスは、けっしてジャックの提案に同意しようとせず、一旦はあまりの苦しさに二人は分かれようとさえ言い始める。がしかし、お互いの魂が激しく惹かれあっていて離れることは出来ないという事を悟り、愛しあう気持ちをさらに深く確かめあう結果となってしまうだけであった。
そんなことがあった後、ある日イニスの元にジャック宛に送ったはがきが戻ってくる・・・

とにかく美しい自然の風景、寂れた何もない中西部の町並み、過酷な自然に立ち向かいながらも必死に生きる人々のつましい暮らし。そんな舞台設定の中にあって、主演の二人の芝居は、数少ない台詞を凌駕するすばらしい表情と仕儀さを撮影した秀逸なカメラワークが、二人の感情も周囲の状況も全てを物語る。
イニスとジャックのさりげないしぐさや表情の中に、お互いへの想いが込められて、あるときは切なく、あるときは苦しく、そしてあるときは満たされている。
ゲイのカップルの存在すら常識の外にあった時代と価値観の世界にあって、お互いに惹かれあってしまった二人は、山の孤立した生活での男の性欲処理の代償行為ではないもの、男女の愛を超える同姓の友情から発展した関係の中に、このような形の純愛がありうるのかどうかという部分が、ファンタジーのようでもありフィクションのようでもあって、深く考えさせられる。
人と人とが惹かれあい魂が交わりあうということがどういう感情なのかを、ここまで上手く表現した映画は少ないと思う。大きなエピソードがあるわけではない、感情をいっぱいに込めた長い台詞の応酬があるわけでもない。ただひたすら淡々としたイニスとジャックの日常の生活を描写し、二人のわずかに垣間見せる感情の爆発の瞬間を逃さずカメラに映し込むだけで、こんなにも切ないラブロマンスが出来上がったことが驚きである。
1回目見たときには正直、その1月前にみたアカデミー賞作品賞を取ったクラッシュの方が、映画としての全体の出来上がりや脚本の出来としてやっぱり上かなと思った。だが、その気持ちは2回目を見て覆った。これらは比べる類の作品ではなく、優劣はつけられないと。
むしろ主演する二人の役者の演技はクラッシュよりも数倍上であったのではないかとさえ思う。彼らがアカデミーでそれぞれ主演助演にノミネートされていながらも受賞できなかったのは、噂によるところの、本当に有望な若手の役者に早いうちから賞を与えると、将来の成長が止まったりギャラランクが上がりすぎて本当によい作品に出にくくなるという弊害もある、という世年寄りの意見が通るので受賞させない、という噂話が、まんざら嘘でもない気がしてくる。
二人はノミネートの名誉だけでも、十分に受賞に匹敵する世間の評価を得たと思う。

以下ネタばれあり

とにかく一番感動して目の前が涙で曇ったのは、全ての自分の想いを押し殺してひたすら生きる為に生きてきたイニスが、長い密会生活に疲れた二人の、ふとした言い争いから出た別れ話に、ついに感情の海が決壊して情けなく泣きくずれる無邪気な姿を見たときである。
またそのとき、それまではイニスを愛しイニスの愛をよすがとして、仮面生活を生きている様に見えていた真性ゲイのジャックが、泣き崩れるイニスの全てを受け止め優しく強く抱擁した瞬間に、二人の愛の強弱関係が実は逆であったのかと悟らせてくれた。そしてこの作品の奥深さと、人間の感情の繊細さを思い知った。
ラスト近くのシーン、ジャックを失い放心していたイニスが、訪ねたジャックの実家のジャックの部屋で、重なったままハンガーにつるしてある二人のシャツをクローゼットで見つけるシーン。ここではもうジャックは出てこないのだが、イニスがシャツをつかんで泣き崩れるとき、見る側もジャックの愛の深さとイニスを思う切なさを、イニスと同じぐらい深く思い知って泣き崩れるしかない。号泣。
最後の回想シーンで、疲れて立ったままうとうとするジャックに、後ろから優しく覆いかぶさるように抱きしめるイニス、美しい山合いで抱き合っている二人の全景シーンへとカメラが引く。このシーンのあまりの美しさに、この映画のことを思い出すときに、何度も何度も心の中にフラッシュバックするインパクトがある。アンリー監督の描きたかった人間関係の普遍的な愛の意味が、この絵のようなシーンの、ワンショットで、全て物語っているような、そんな気がして、少しだけこの世界がわかった錯覚に陥る。

中身を見る前に多くを語っても、また見る上でさまざまな先入観を持ってしまっても、この作品を理解することはできない。どういう作品なのかをなにも考えずに見ていると、唐突にテントで体を重ねるカウボーイの男たちの、純粋な行為に驚くかもしれないが、それでも真剣な二人の生き様に目をそむけずじっくりと見届ければ、彼らのしぐさの一つ一つが、表情のかすかな動きが、そして目線が語る全ての心を、理解できるはずだ。
そして最後には、全ての愛の形が、なんとなく受け入れられて、そういった普通とは異なる者への偏見を持つことこそが恥ずかしいとさえ思えてくる、そんな作品である。

最後に、本作はものすごい数の映画賞を席巻した話題作にのし上がった、おそらく製作した関係者の誰も予想していなかったに以上に、人々の感情へ与えた作品のインパクトは大きかったのだと思う。そしてコレは永遠に語られ観てもらえる作品の1本に仲間入りしたと思う。主演したヒースもジェイクも役者として大きくステップアップしたきかっけの作品として後々語られるに違いない。

データの出展はallcinema ONLINEのブロークバックマウンテンのページ

□はノミネート、■は受賞
アカデミー賞
2005年 □ 作品賞
□ 主演男優賞 ヒース・レジャー
□ 助演男優賞 ジェイク・ギレンホール
□ 助演女優賞 ミシェル・ウィリアムズ
■ 監督賞 アン・リー
■ 脚色賞 ダイアナ・オサナ
ラリー・マクマートリー
□ 撮影賞 ロドリゴ・プリエト
■ 作曲賞 グスターボ・サンタオラヤ
 
ヴェネチア国際映画祭
2005年 ■ 金獅子賞 アン・リー
 
NY批評家協会賞
2005年 ■ 作品賞
■ 男優賞 ヒース・レジャー
■ 監督賞 アン・リー
 
LA批評家協会賞
2005年 ■ 作品賞
■ 監督賞 アン・リー
 
ゴールデン・グローブ
2005年 ■ 作品賞(ドラマ)
□ 男優賞(ドラマ) ヒース・レジャー
□ 助演女優賞 ミシェル・ウィリアムズ
■ 監督賞 アン・リー
■ 脚本賞 ラリー・マクマートリー
ダイアナ・オサナ
□ 音楽賞 グスターボ・サンタオラヤ
■ 歌曲賞 Bernie Taupin “A Love That Will Never Grow Old”(詞)
グスターボ・サンタオラヤ “A Love That Will Never Grow Old”(曲)
 
英国アカデミー賞
2005年 ■ 作品賞
□ 主演男優賞 ヒース・レジャー
■ 助演男優賞 ジェイク・ギレンホール
□ 助演女優賞 ミシェル・ウィリアムズ
■ 監督賞(デヴィッド・リーン賞) アン・リー
■ 脚色賞 ラリー・マクマートリー
ダイアナ・オサナ
□ 作曲賞(アンソニー・アスクィス映画音楽賞) グスターボ・サンタオラヤ
□ 撮影賞 ロドリゴ・プリエト
□ 編集賞 ジェラルディン・ペローニ
ディレン・ティチェナー
 
ヨーロッパ映画賞
2005年 □ インターナショナル(非ヨーロッパ)作品賞 監督:アン・リー(アメリカ)
 
インディペンデント・スピリット賞
2005年 ■ 作品賞
■ 監督賞 アン・リー
□ 主演男優賞 ヒース・レジャー
□ 助演女優賞 ミシェル・ウィリアムズ
 
放送映画批評家協会賞
2005年 ■ 作品賞
□ 主演男優賞 ヒース・レジャー
□ 助演男優賞 ジェイク・ギレンホール
■ 助演女優賞 ミシェル・ウィリアムズ
■ 監督賞 アン・リー
□ 脚本賞 ラリー・マクマートリー
ダイアナ・オサナ
□ 歌曲賞 Emmylou Harris “A Love That Will Never Grow Old”
□ 音楽賞 グスターボ・サンタオラヤ


オフィシャル・サイト
http://www.brokebackmountain.com/

国内版DVDは出てませんが・・・
↓コレほしいです
『ブロークバック・マウンテン』プレスブック Press Book





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Last updated  2006.04.11 00:32:07
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