カサノバ(Casanova)
2005年アメリカ112分
監督:ラッセ・ハルストレム
脚本:ジェフリー・ハッチャー、キンバリー・シミ
撮影:オリバー・ステイブルトン
音楽:アレクサンドル・デブラ
出演:ヒース・レジャー、シエナ・ミラー、ジェレミー・アイアンズ、オリバー・プラット、レナ・オリン
配給:ブエナビスタ
カサノバ公式サイトはこちら yahooMovieのページ
監督さんは「ショコラ」の人、ラッセ・ハルストレム監督。(主演ヒースの「チョコレート」とは違うのでややこしいです(笑))
大胆不敵さと繊細さを合わせ持ち、優しい言葉で貴族の令嬢から娼婦に至るまで、130人(作中では127人からの訴状という言葉があります)とも言われた恋人たちに彩られていた生活を送っていた、人類史上最も有名な『恋愛の達人』-カサノバ。という謳い文句があちこちの映画サイトに・・・そうなのか、そんな人が実在したのか・・・とちょっと驚き。
いつも女性達に誘惑こそされ、自分から誘惑をすることはないと言う稀代のプレイボーイカサノバは、今日も修道女の誘惑に乗って昼下がりの情事の真っ最中、彼を逮捕すべく教会から使わされた警備兵は彼を逮捕しようと踏み込んで来る。
身づくろいもそこそこに窓から逃走し屋根を伝って大学の講堂へ、時を同じく、女性への封建的差別的な思想を改革しようと一人の女性が男装して教壇を占拠、演説を始めた。そこへ追手を引き連れたカサノバが乱入。講堂でついにカサノバは逮捕されてしまう。
司教の前での裁判では、カサノバの罪状を証言するはずの修道女が実は枢機卿のお嫁さん候補ということで、スキャンダルを恐れたバチカンの指示でなんとか無罪放免に。ヴェニス市からの追放を免れる条件として、カーニバルまでに結婚して落ち着いた生活を持つことを義務付けられてしまう。実はカサノバには、ある人との約束を守っていて、ヴェニスを離れられないわけがあった。
そこで困った彼は、市中でも有名な美しい貴族の娘に求婚しようと貴族の家を訪問。ところがその貴族の娘には、積年の恋心を抱く青年貴族が居て、彼をカサノバとは知らずに恋敵として決闘を申し込む。しかも、決闘の場に現れたのはその青年貴族を装った彼の姉フランチェスカであった。
いままで女性から誘われつづけてきたカサノバであったが、突然目の前に現れた知性的で勝気で剣の腕も抜群な男前なフランチェスカはに惹かれる。一方フランチェスカも、彼がカサノバ本人であることを知らないまま、カサノバの生き方を批判し、自分こそは生涯にただ一度の恋に生きることを夢見ていると純愛を説く。そんなフランチェスカによって本当の恋心に目覚めたカサノバは、自分がカサノバであることを隠しながら、彼女の愛を勝ち取るため臣下のルポとともに東奔西走する。
その時を同じくして、公序良俗を乱す犯罪者としてカサノバ逮捕に執念を燃やすプッチ大司教が新たに赴任してくる。彼は、カサノバ逮捕に秘策を練るが、ことごとくカサノバの智計に裏をかかれてしまう・・・そんな時、フランチェスカの父が決めたいいなずけが約束を果たすためにヴェネチアにやってくる・・・
結婚期限のカーニバルが迫る、しかし婚約した貴族の娘よりもフランチェスカが好きになってしまったカサノバ、あげくに邪魔な彼女の婚約者までやってきた。さてカサノバ君どうするの・・・
(以下一部は日記の記述と重複します)
ということで、とても軽快で楽しいコメディ作品。
神秘的な水の古都ヴェネチアでオールロケを慣行し、18世紀のヴェネチアを再現した美しい絵画のような美術と衣装、そして光と影が美しいカメラワーク。ちょっと旅行願望が首をもたげてしまう、そんな美しい映像美も魅力。
この色男、歩くフェロモン、実在した稀代のプレイボーイなカサノバ役には「ブロークバック・マウンテン」で腐女子の知名度を一気にあげた若手演技派ナンバーワンのヒース・レジャー。カサノバのフェロモンをものともせず、逆に彼を翻弄して恋に貶める人気覆面恋愛指南書作家で当時としては型破りな女性フランチェスカ役が「アルフィー」のシエナ・ミラー。宿敵にして本作の唯一の悪役プッチ大司教を演ずるはジェレミー・アイアンズ。彼は「ヴェニスの商人」以来よほどヴェニスに縁のある役者のよう。
日記にも書きましたが、ヒース(レジャー)のカサノバが若々しくてキュートでしかもぜんぜん嫌みを感じさせない格好良さ、最高に魅力的で男前。
しかもブロークバックのイニスなヒースとは180度違うとてもはつらつとしたキャラ。とにかく可愛いくてセクシーで若々しくてどこか知性も感じさせる、非の打ち所なし。
しかも男女の恋愛を爽やかに描き、さらにはヴェネチアの奔放で開放的な性描写にエロイ雰囲気はい。自然な男女の欲求に基づく行為という感じであっけらかん。
雰囲気はシェークスピア劇のようでもあり、脚本は非常にウィットに富んだ台詞が多く、こじゃれた演出。とても楽しく鮮やかな人物描写。
ヒロインのシエナミラー、演技も表情も上出来。あまり美女とは思えないが、ロンドンのトップモデル出身ということでスタイルは抜群、知性的で男勝りでロマンチストな女性をうまく演じていました。
あれ?これ・・・どこかで観たなぁ・・・と思って、はたと思い当たりました。シャイロックの居ないヴェニスの商人の世界。町並みが同じ空気、そして人々の暮らしぶりや雰囲気も・・・
なんと役者さんも被ってます。今回の悪役、カサノバ逮捕に執念を燃やすプッチ司教はヴァッサーニオの恋人(?)でシャイロックに肉をえぐられそうになるアントーニオ役のジェレミー・アイアンズ、今回はめちゃくちゃ雰囲気が違う嫌みな司教を飄々と楽しげに演じてます。
そしてもう一人、ヴェニスの商人と共通の役者さんが、ヴァッサーニオの取り巻きの青年役だったチャーリー・コックス君。彼はドットジアイでも取り巻きのお兄ちゃんの一人を、ちょっとくりくり目で可愛いい気のいいおにいちゃん。今回はシエナ演じるフランチェスカの弟君役、彼は地味で晩生な感じで登場しますが、実は物語を進める上での重要な役を担うキーマン。
その他共演者達もみんな生き生きとしていて、とっても躍動感があり、この監督さんカメラワークや人の表情の捉え方には上手さがあるなと思います。
人間関係といえば、主従関係がとても上手く描かれていて、最高に気に入りました。特に、カサノバの唯一の使用人のルポとカサノヴバとの関係。彼らは主従でありながら家族(兄弟)のようで、とっても良かったです。
あと、カサノバの存在感がとても上手く描かれていますが、それでも彼が奔放な女性遍歴を持って居ながらも、どこかに気品と優雅さや自信があって、しかも若者らしいはつらつ感まであるのがすばらしかったです。また、最後のエピソードでのヒースの表情が、彼本来の年齢、まだまだ20歳代の若者だったんだと思い出させてくれる、かわいらしくてキュートで多感で純粋な若者の表情を垣間見せてくれて、胸がきゅんと締め付けられ涙がこぼれました。
いろいろいちゃもんつける方もいるかもしれませんが、映画好き、ヒース好きには最高最強の1本です。
この1本を端的に表現するなら「花咲ける騎士道」と「ヴェニスの商人」の2作品をうまくミックスして美味しいとこ録りした感じの作品ですと言えば、なるほどっと判っていただけるかも知れません。もちろん、そんなこんなですから、作品中最強最高の色男の声は、勿論森川さんで脳内変換していたことは言うまでもありません。ブエナビスタ様・・・★★★★