結び目結び目 ―小樽港にて― ![]() 結び目をほどく 先日、駅弁を買った。紅白に撚り合わされた糸で十文字に縛られていたのだが、結び目がなかなかほどけずに、かえって固く結ばれてしまった。急いでいたので、とりあえずは、固い結び目を作ってしまったまま十文字の糸を引っ張って、むりやり駅弁を開封し、食事を終えた。 気になるのは、固くなってしまった結び目である。どうせゴミとして捨てるのだから、どうでもいいことなのだが、結び目をほどいてから捨てたいのである。 結び目をほどくことは、私の「まじない」である。今まで心の中に溜まってしまった、幾つかの固い「結び目」がある。こんがらがった人間関係であり、無力のまま放置してしまった課題であったり、いろいろだ。 そんな「心の中の結び目」を思いながら、丹念に糸の結び目をほどく。その作業が、私にとって慰めであり反省であり、作業に癒されるひとときである。また、無力な自分の懺悔でもある。 懺悔と祈りを交えた「結び目ほどき」の作業に没頭した後、ふと見上げる車窓からの紅葉は美しかった。紅や黄の暖色は、ときに薄日で黄金に輝き、私の心を温かく明るく照らしてくれた。 ごとごとと揺れる列車の中で、少し眠った。(1999.11.6 読売新聞掲載) |