penetore
― 中心からの愛と中心への愛 ―ぼく:愛するってどういうことかな? ペネトレ:二つの種類の愛があるな。世界のはずれから世界の中心へ向かっていく愛と、世界の中心から世界のはずれへ向かっていく愛の二つだ。いまきみがね、ある女の子をすごく好きになったとするよ。そのとき、きみは世界のすみっこにいて、その女の子は世界の中心にいる。そのとき、きみは世界のすみっこにいて、その女の子は世界の中心にいる――きみはそう感じるはずなんだ。 ぼく:そんなふうに、好きになったことなんてないから、よくわかんないけど……。世界の中心とかすみっこって言えば、ぼく、ひとりでCDで音楽を聞いていると、ときどきすごくさびしくなるんだよ。いまこの音楽を聞いているのはぼくだけなんだと思うとね。だから、テレビやラジオのほうがずっといいな。どんなにおもしろくない内容でも、そのとき、たくさんの人が同時にぼくとおなじものを見たり聞いたりしてくれているからね。そう思うだけで、すごく安心できるんだ。そういうとき、世界の中心とつながっているって感じがするよ。 ペネトレ:テレビやラジオは、この世の中の中心とはつながっているけどね――そのとき大事件が起こったら、すぐにニュース速報で教えてくれるからね――でも、世の中の中心は、まだ世界の中心じゃないさ。世界の中心っていうのは、もっと深い、すべての意味の源であるような、そういう中心なんだよ。どんなに世の中の中心にいても、世界の中心とつながっていないって感じることはあるさ。もし、きみがだれかに対して、そういう世界の中心がそこになるなって感じたなら、それは愛だよ。 ぼく:ふーん。でも、中心のほうからすみっこに向かう愛もあるんでしょ? ペネトレ:そうさ。自分自身に、すこしでも世界の中心とつながっているという安心感があって、その安心感をすみっこにいるあの人にも分け与えてあげたいって感じたとすればね。それも愛だよ。 永井均=著 内田かずひろ=絵 講談社 ジャンル別一覧
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