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ウィリアム・モリスを追って

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2017.05.31
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カテゴリ:人間モリス

ウィリアム・モリスとはいったい何者であったのか?多くの人が、その問いを持ちながらモリスに近づき、そしてその多彩さ、あまりの巨大さにとりつく島のない思いを抱き、茫然とたたずんでしまうのではないでしょうか。

人間は他人を見る時、誰しも自分の器、自分の色眼鏡でしか見ることができないものですが、どんなにちっぽけな視点でしかなかろうと、やはり私は私にとってのモリスを淡々と追い続けていこうと思います。


最近、人に勧められて高橋和巳の『邪宗門』を読みました。高橋和巳と言えば、1960年代学生運動はなやかなりし時期にかなりもてはやされた作家だったようで、当時の大学生に強く支持されていた『朝日ジャーナル』に連載されていたこの『邪宗門』は、彼らのバイブルともいえる存在だったそうです。ということは、その学生運動の退潮とともに、高橋和巳の名前も忘れられた作家になっていったのではないでしょうか。ところが、今読んでみると、戦前、戦中、戦後の時代が実にリアルに生き生きと再現されていて、こんなすごい小説があったのかと圧倒されてしまったのです。

そしてその壮大な歴史ドラマの中で、語られた登場人物の次のセリフが強烈に心に刻印されました。

「この世のすべては、しょせんは男女の仲のこと。男が女をいつくしまいで何の正義よ。道学者や政治家を信ずるでない。軍人や富豪にあこがれるでない。一人の男の出世のかげに、何人の女が泣くものよ」


「この世のすべては、しょせんは男女の仲のこと」このセリフは、女性から見た言葉ですが、男から見ても同じでしょう。身も蓋もない言い方をしてしまえば、男というものは、どんなに偉そうな顔をして、どんなに偉そうなことをのたもうていても、結局は女性の尻を追っているだけなのじゃないか、と。

人間の精神性をことさらに低めようとするわけではありませんが、ままならない現実生活を生きていくためには、心の中に、制度的な妻とは別の《理想の女性》を描き、その理想化した女性に好かれるためにこそ、仕事に邁進する。そういうことはありうることであって、有名な例ではベートーヴェンが生涯抱き続け、創作の糧とした《永遠の女性》があげられます。その永遠の女性はいったい誰だったのか、をめぐっていまだにいくつかの説があるようです。モリスも、そういった視点から見るとなかなか不可思議な男でした。妻の裏切りを知りながら、その不倫相手のロセッティを手助けするような策を弄しています。なぜなのか?その屈折した心理の真相は、おそらく永遠に解かれることはないでしょう。

ただ、少しモリスに詳しく関心をもった人ならば、生涯の親友エドワード・バーン・ジョーンズの奥さんジョージアナ女史の存在は気になるところだと思います。なんといっても、バーン・ジョーンズも絵のモデルであったギリシア人女性と不倫関係だったのですから。お互いに妻に、夫に裏切られたモリスとジョージアナが友情を深めていったことは、自然の情かもしれません。

モリスが、彩飾手稿本の研究を続け、その試行錯誤の作品を作るなかで、もっとも美しく仕上がった二冊ともを、そのジョージアナに贈っているのです。そして、1891年10月3日、モリスが息を引き取るときも彼女は傍らで見守っていたと言います。

たんなる友情関係以上のものがあったのか、なかったのか。これはもう想像するのみです。ただ、私は個人的にモリスの仕事というものが、どうも全てが未完で、すべてが可能性であるようなまま止まってしまっているという思いが強いのです。つまり、多彩な仕事をすればするほど、その仕事のひとつひとつには人生のピントが合っていなかったのではないか?と思わざるを得ないのです。まるで巨大ながらんどうのような存在です。

上述の『邪宗門』の世界にみるように、このように社会的に素晴らしい立派な業績を残した偉人が、おうおうにして人生のフォーカスが、実は仕事ではなく理想化した心の女性像に向かっていたということはあるのだろうと思うのです。


晩年は社会主義活動ではなく、最も身近な理想の本づくりに全てをかけていったモリス。彼の精神はいったいどこに収斂していたのでしょうか。理想やたてまえではなく、人は死を見つめ始めた時には、本当に本音の部分で生きようとするものでしょう。背伸びすることもなく、ただひとえにジョージアナに魂をささげたかった。そう想像してしまうのは、やはり私が小さなキャパしか持ち合わせていない小さな人間だからなのでしょうか。
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Last updated  2017.08.07 15:55:45
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ブブドン@ ありがとうございます。 夕焼け色さん、この日をご記憶に留めて下…
夕焼け色@ Re:4月20日(03/31) どうやって、写真をアップするのでしょう…
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