踊れ!
『踊れ!「YOSAKOIソーラン祭り」の青春』文芸春秋 軍司貞則著を読みました。札幌のYOSAKOIソーラン祭りのドキュメント。長谷川岳さんという、1人の大学生が始めた、巨大な祭りが生まれた背景が、臨場感溢れるタッチで伝えられている。私はこれを読んで、本当にびっくりした。それは、着想からわずか半年で、これだけの祭りをなしとげたこと。地元企業や新聞社を巻き込み、1,000万以上の協賛金を集め、1,000人以上の踊り子を集め、警察や行政から道路使用許可を取り、北海道、高知それぞれの知事の対談を実現し、そして高知から本場よさこい祭りの、花形グループに、持ち出しできてもらう。それらを、大学2年生のわずか数人のメンバーと、その呼びかけに応じた100人の学生でやってのけた。奇跡としか、いいようがない。私は長谷川氏とは、同年代なので、よけいにすごいなあと、ただただ感嘆の声をもらすばかり。長谷川氏の真摯な、純粋な、まっすぐなその強い思いに、どれだけの有力者が動かされたか、是非いろんな方に読んでもらいたいと思った。「なぜそれをやりたいのか?」「どうしてその人がやらなくてはいけないのか?」が明確であり、「それをやることによって、地域がどうなるのか?」を伝え続ける。そして、長谷川氏の、病気と闘う母親への思い、超えるべき存在である父親像との確執も、共感を持って読み進めた。ドリプラを広げていくには?という参考に手に取ったのだけれど、「情熱」「本気」「行動」「コミットメント」「人を巻き込む力」など、純粋なまでにまっすぐな彼らの行動に、はずかしい思いでいっぱいになった。私は最初から、「できない」ことばかりさがしていたなと改めて自覚。いいときに、また、いい本を手に取れたことに感謝。以下、印象的な箇所を。(1)ビジョンを打ち立てたら、すぐに文字化する。 “YOSAKOIソーラン祭り”はわれわれの頭の中にしかなく、 札幌の人たちはその実像をしらない。見たことのないものを 概念としていかに眼に見えるように伝えるか(2)行動に際しては必要なものから優先順位をつけて行う(3)逃げ道を自ら絶て。はったりをかましながら自分の行動に 責任を持とう(4)絶対に成功する、という信念を持って行動する岳は実行委員会を結成したときから祭りにちょっとでも興味ありそうな学生に片っぱしから声をかけまくった。趣味が一緒、性格が合う、という狭いワクにとらわれないで、多少クセがあってもエネルギーがあればとりこんだ。そういうタイプも組織のなかで必要になるときがあると考えたからだ。「どうして高知の祭りを札幌でやる気になったの」「感動です。ホンモノの踊りや祭りは見ている人に感動を 与えます。」「ひとつのことを真面目にやると必ず花が咲く」今回はひとつ長谷川という男の「誠意」「純粋さ」に損得の問題を抜きにして賭けてみようか、と思った。岳は、祭りの前日から殆ど寝ていなかった。四トンの大型クレーン車を広告社が見つけてきたものの運転手がいなかった。実行委員会には特殊免許を持っている者がいない。地方車が動かなくては祭りにならない。岳は深夜、長距離トラックの往来が激しい国道に出て、長距離便を一台一台止めてやっと運転手を探し出した。そんな荒業で地方車は動き出したのだ。