チェロ演奏も研究
個人的研究、英語の論文の形にしなくてもよい探求の営み、という点ではチェロ演奏もまったく同じだ。 一年以上取り組んできたラフマニノフのチェロ・ソナタをまだ練習している。去年の8月に4楽章を、去年の10月に全楽章を、今年の3月に1,2楽章を本番で演奏し、来月2楽章を演奏して終わりだ。これだけ弾いてきても、考えることは多い。ほぼ毎日チェロを一人で練習し、週に2回くらいカミさんのピアノと合わせるが、「これが自分が最高だと思える演奏なのだろうか?」という質問を自分に問いかける。そして問題点が見つかれば、その解決法を模索し実験してつかむ。その改善策に沿って練習し本番で実現するように体に覚え込ませる。 この曲を今は2楽章しか練習しないが、たとえば三重和音のピチカートの最高音がきれいに鳴らないことが多い点、一弓で飛ばす三連符のスピカートでリズムが狂うことがある点などは、スタート時の右手の位置を理想的な場所にもってくることで改善できる。中間部の朗々と歌う部分では決して弓の速度を遅くしない、特に初速を速くすることを常に心がけることで、会場で音が伸びる。 こういう脳の動かし方はプロの研究者のそれと全く変わらない。