テーマ:ワイン大好き!(30213)
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フォン・ヘーフェル醸造所の隣のテーブルには人だかりが出来ていた。中国から来た一団が、ライヒスグラーフ・フォン・ケッセルシュタット醸造所のオーナーであるアネグレット・レー・ゲルトナー女史を取り囲み、熱心に彼女の話に耳を傾けていた。
身振りを交えて語っているのがレー・ゲルトナーさん。 中国はいまやドイツワインにとっても重要な市場である。ドイツワインの輸出相手国としては日本に次ぐ世界8位だが、輸入量は2012年に既に横に並ばれている。2013年には一リットルあたりの単価では日本の3.99Euroに対して中国が4.18Euroと追い抜かれてしまった。メッセ・デュッセルドルフが主催する国際ワイン見本市ProWeinは2013年秋から上海でも開催されている。フランスのヴィネクスポはもっと以前からだ。かつてのボルドーブームは一段落したようだが、そのぶん、ワイン市場は成熟しつつあるようだ。明後日の日曜日からデュッセルドルフで開催される本家ProWeinにも、今年も大勢の業界関係者が中国から訪れるという。彼らの姿がProWeinで目立ちはじめたのは、確か2010年ころだったと思う。あの頃は「彼らは本当にワインのプロなのかね?」という声も聞かれたが、今はどうなのだろうか。いずれにしても中国は広大な市場であり、資金もある。ドイツワインの輸入量がかの国においていまだに日本と大差ないということに奇異の念すら覚えるが、おそらく流通面での難しさが、色々とあるのかもしれない。 2013年産のライヒスグラーフ・フォン・ケッセルシュタット醸造所にはとても好印象だった。充実したミネラル感とクリーンな果実味に綺麗な酸味が溶け込んでおり、美しかった。畑の個性-すっきりとして繊細でミネラル感の明瞭なヴィルティンゲンと、やや粘性と重さのあるユッファー・ゾンネンウーアに、これぞモーゼルのリースリングと言いたくなるようなヨーゼフヘーファーは、繊細で力強い酸味がミネラル感のあるボディに溶け込んでいる様子に嬉しくなった。 醸造所はルーヴァーの奥地にあり、36haの葡萄畑はルーヴァーとザールとモーゼルの中流に分散している。2013年は雨と高温でどの畑も一刻を争う状況だったから、朝早くから日没まで、週末もおかまいなしに2週間全速で収穫作業を行い、セラーでも24時間フル稼働して圧搾・醸造したという。ヘクタールあたりの収穫量はルーヴァーが19hℓ/ha、ザールは25hℓ/ha、モーゼルで42hℓ/haに留まった。 ケッセルシュタット醸造所はトリーアの大聖堂のはす向かいに直営居酒屋を所有しており、グラス単位で色々と楽しめる。また、典型的なハム、ソーセージ、ゼリー寄せとドイツパンの盛り合わせや、暖かい料理も手頃な価格で提供している。夏場は店の前の庭に並んだテーブルがお勧めだ。日暮れとともに強さを増していく蝋燭の明かりが、人々の顔とグラスを照らす中で飲むリースリングは格別である。冬場は暖かな店内のカウンタに集う常連達のおしゃべりを聞くともなしに耳を傾けながら飲んでいると、いつしか時がたつのを忘れてしまう。 ケッセルシュタットにはこの常設の居酒屋があるせいもあってか、新酒試飲会は数年に一度、気が向くと開催していた。毎年開催していたのかもしれないが、私は知らない。会場がルーヴァーの奥地で帰りのバスがなかったりして、行くに行けなかったことが何度かある。いや、あれは新酒試飲会ではなく、満月ワイン祭りだったか。月明かりの中で音楽とワインを楽しもうというイヴェントだった。あそこまで行くには車がなければ行けないし、行ったら当然ワイン飲むことになるが、ほとんどの場合ドイツ人らしく限界をわきまえて理性を保ち、安全に運転して帰るようだ。 ケッセルシュタット醸造所は年に3回あるルーヴァーの試飲会にも大抵出展していたので、私にとっては馴染み深い醸造所の一つで、それもあって醸造所の新酒試飲会に行く必要がなかった。オーナーのアネグレット・レー・ゲルトナーはライヴェンにある大規模醸造所カール・レーの一族で、ファルツのシュロス・ヴァッヘンハイムや、ブラック・タワーで知られるレー・ケンダーマン社、ブルゴーニュのドメーヌ・ベルターニャの他、ルーマニアにも醸造所を所有する華麗なる一族である。ライヒスグラーフ・フォン・ケッセルシュタットの醸造所と醸造所名は、レー家が1978年に購入したものだ。 今日では一般的に用いられるファインヘルブfeinherbというオフドライを意味する名称は、ケッセルシュタット醸造所が使い始めた呼称で、2002年にワイン法に抵触しないという判決が連邦行政裁判所から出るまで、同醸造所は裁判で争っていた。ファインヘルブという呼称があるのは、この醸造所のお陰と言って良い。 さて、少し長くとりとめがなくなったので、今日はこの辺にしておこう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015/03/14 12:14:43 AM
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