さて、昨日の続き。
その醸造所には午前10時のアポイントメントをとった。アポの時間も考え所で、あまり早すぎてもしんどいし、遅いと午後の予定に差し支える。醸造所を訪問すると、往々にして予定時間をオーバーする。それだけ醸造所の人達が親切で、わざわざ来てくれたのだからと、貴重な時間を惜しみなく提供してくれることが多い。これはドイツにいた時からそうだった。

そもそもがワインを飲みながらおしゃべりすると、時間はあっという間に経ってしまう。ワインがなくても醸造所を訪問するとハイになるので、時間は矢のような早さで過ぎ去る。私は標準的に2時間を見込んでいる。予定を立てる時は、二時間も一体何を話したらいいのか、間が持つだろうかと思ったりするのだが、これまでのところ時間をもて余したという経験はない。いつ行っても、そこには濃密な、充実した時間が待っている。

だから、往々にして午後の予定は押せ押せか大幅に遅れることが、正直なところある。本当は予約に遅れるのは大変によろしくない。逆の立場になって考えて見ればすぐわかる。身勝手なもので、例えば乗り物を待っていると、たとえ3分遅れてもかなりイライラさせられるのだが、乗ってしまうと今度は早く出発しないかと逆にイライラしたりする。待たされるのは誰にとってもつらい。だが、それを表に出す醸造家は少ない。が、たまにいる。

私の友人の話だが、母国からの団体のガイドをしていた時、例によって予定が遅れた。最初に訪問した醸造所が予想以上に歓待してくれたのだ。－何、昼食がまだだって？それならあのレストランがお勧めだよ。そんなに遠くないし、何、急げば次のアポにも間に合うさ。－その話を真に受けてレストランに行ったのが運の尽きで、意外に遠かったし料理も充実していたしで、約束の時刻を大幅に超過。もちろん事前に遅れる旨連絡したが、醸造所に到着するなりオーナーにこっぴどく怒られたという。しかし、ひとしきり怒りをぶちまけたあとは気が済んだようで、丁寧に案内してくれたから、結果オーライでよかったのだが。

これもたまにあるのだが、予約をしたはずなのに誰もいなかったとか、オーナーの機嫌が悪くて相手をしてくれなかったということもある。滅多にないが、そういうこともある。それはトリーアに住んでいたころだったから良かったようなものの、日本から来てそういうことがあると、これはもう、残念至極であるから、そういうことのないように、なるべくドイツについたらその旨連絡して、もうすぐお目にかかれること楽しみにしています、何かあったら携帯にご連絡下さい、ぐらいのメールをちょろっと出しておくと、まぁ大丈夫だろう。

それで、なにはともあれ極力時間は厳守するようにしている。約束の時間より少し早めに着くようにして、余裕があればそこらへんを散歩しながら、何を話したものか考えたりする。気持ち的にもゆとりができるし、あとからあれも聞いておけばよかった、あれについて質問するのを忘れたとか、後悔する項目を減らすことができる。約束した時間は守るのは常識だ（と書いたりすると、近い将来遅刻することがありそうな気がするけど）。

そんな訳で、とりあえずアポがとれたらネットで時刻表を見て、最寄りの駅に列車が到着する時刻か、あるいはバスが最寄りのバス停に到着する時刻を確認して、そこから醸造所への到着時刻を計算して必要があれば最初に伝えた時間を訂正する。田舎では一時間に一本しか公共交通機関が来ないという村も多数ある。例えば10時に予約しておいても、実は9時半か10時半にしか電車がこないとわかれば、それに応じて時間を変更する。一度ＯＫがとれていればその程度の変更は問題ない。醸造所の到着時間の確認にはgoogleマップが最適だ。駅やバス停から徒歩で必要な時間もすぐわかる。

そうやって念入りに計画を立てても、その日の朝最初に乗る電車を逃したら予定は根底から崩れ去ることになる。不案内な駅で自分を目的地まで乗せていってくれる列車を探し出して、まずはそれに乗らなければならないのだが、今回マインツでは見事に引っかかった。
つづきはまた今度。