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2006/12/28(木)00:33

伝説の天才数学者

人物紹介(42)

今日は、伝説の天才数学者、森重文君のことについて書きましょう。何故私がこの世界的な天才数学者を森君と呼ぶかというと、彼は私の中学・高校の1年後輩だからだ。名古屋、伏見のタオル卸問屋の長男として生まれた森君は中学から東海に入った。お姉さんが1人いて、本来森君が後を継がなければいけないわけだが、東海時代から数学の好きな森君をみて、ご両親はこの子には好きなことをやらせようと思ったという。”大学への数学”という受験雑誌があり、ことし創刊50周年を迎える。掲載記事は入試問題の解説だけにとどまらず、一流数学者によるエッセー、数学史などを載せ、巻末に骨のある添削問題を並べた「学力コンテスト」があった。この「学コン」で1年間ほぼ連続満点を続けた「伝説の人」となり、高校時代から全国の数学者から注目されていた。そんな森君と初めて出会ったのは、私が高校2年のとき、囲碁が好きだった数学の先生を顧問にして、囲碁同好会を作ったとき、1年生の森君が入ってきた。その当時私はすでにアマチュアの初段か2段くらいあったので、森君には最初星目置かして打っていた。学年が違うので、数学の好きな変わった子という印象しかなかった。高校2年のとき、東京へ第3回高校囲碁選手権に主将で出た。1回戦は早稲田大学高等学院高校との対戦、1勝1敗で主将の私の碁に勝負がかかった。この当時はまだ対局時計を使ってなかったので、時間がくると審判の判定になる。審判長はその当時全盛期であった坂田栄男名人本因坊だった。判定で私の勝ちとなり、2回戦に勝ち進んだ。でも2回戦であっさり敗退した。森君の話に戻そう。次に森君にあったのは、雪の降る京都であった。私は理論物理学に憧れて、東大受験に失敗した後、京大の理学部を受けにきて、京大病院の前の小さな旅館に泊まっていた。何とそこに森君がお母さんといるではないかあれ、どうしたんだというと同じ理学部を受けるという。東大入試が中止となり、史上最難関と言われた年だが、2人とも無事合格した。大学に入っても半年ほど教養部は過激派学生で封鎖されていて、学生が好きな先生を呼んで自主講座をしていた。私はすぐに囲碁部に入って囲碁三昧の毎日だった。最初一乗寺の方に下宿、3年目から吉田の方に移った。森君の下宿も近くだった。ときどき遊びに行っては、囲碁やトランプ(神経衰弱)をしたり、ビリヤードやボーリングに誘いだすこともあった。下宿は数学の本で溢れており、いつも数学の問題を考えていた。考えるときの森君の癖は頭の毛を指でくるくると巻きつけては離し、巻きつけては離しを繰り返す。さも頭の中から何かを取り出そうとしているように。ときどき、お母さんが京都まで来ると私も呼んでくれて、美味しいものを食べさせてくれる。貧乏学生でアルバイトをしていたので、お金がなくなると生協の素うどん(当時30円だった)で飢えをしのいでいたので、これは有り難かった。森君はとても気さくで付き合いがよかった。私はどちらかというと、勉強の邪魔をする悪友であったが、ビリヤード、ボーリングなども誘えば嫌がらずについてきてくれる。数学の問題を考えながらだけれど、・・・。ときどき、遊んでいても「わかった、わかった。」と言い出す。「何が解ったんだ」と言うと、「考えていた問題が解けた。」と言う。そんな森君を見ていて、最初は解析概論を読もうとしたこともあったが、とてもこんな人たちについていけないと思って、ますます学問から遠ざかっていった。4回生の夏に女房と再会して、転向を決断した。森君は大学3年のときに、米ハーバード大にいた広中平祐が母校へ来て行った臨時講義を聴き、それを克明にノートに取った。講義のあと、広中と定食屋に行き、広中が難しい例を簡単な絵にして説明するのを見て、代数幾何学という分野に進んでいった。70年代に若干20歳代で「ハーツホーン予想」という世界中の数学者を悩ましていた難問を解き、そこから代数幾何における3次元の図形にはどんな種類のものがあるかを示した。90年にこの業績で数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞の日本人で小平邦彦、広中平祐についで3人目の受賞者となった。京大大学院を出たあと、ハーバードへ assistant professor として行き、帰ってきて名大理学部の助教授となった。このころ、結婚式に呼ばれて行ったら、東大、京大、東北大、名大など、全国のおもだった国立大学の数学の教授が一同に会していた。ヒェ~、えらくなり過ぎと思った。現在は母校京大の数理科学研究所の教授となり、新幹線で名古屋から京都まで通っている。東海からは総理大臣(海部俊樹)、知事(神田正秋)も出ているが、学者と言えばこの人であろう。

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