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2015/02/02(月)20:09

食草から見た蒲郡の蝶─その11─ギンイチモンジセセリ

昆虫(2906)

食草から見た蒲郡の蝶のその11はギンイチモンジセセリを取り上げて見ます。ギンイチモンジセセリは白水 隆先生の日本産蝶類標準図鑑の分布図を見ると愛知県は分布していないことになっています。今一番よく使われているフィールドガイドの分布図も日本産蝶類標準図鑑の分布図を引用していますので同じです。しかし、過去に矢作川や豊川の河川敷で発生したと言う情報もありますし、2011年7月25日に埋め立て地の自然を日本理科学会の事前調査として蒲郡のラぐーナ埋め立て地を調査している時に偶然発見しました。この土地は1991年に愛知県、蒲郡市、JR東海、トヨタ自動車が出資して第3セクターの蒲郡海洋開発(株)を作って、1995年~2001年にかけて埋め立てたものです。西側にはラグナシアと言うテーマパーク、そしてラグナマリーナと言うヨット基地、フェスティバルマーケットと言うショッピングモールが出来、その東にタラソテラピーと温泉施設「ラグーナの湯」が開業しました。その東側は高級リゾート地として開発される予定でしたが、バブルがはじけて経営破綻し、しばらく放置されることになりました。トヨタがそこに海洋学園と言う6年一貫教育の中等学校を建てましたが、その北側は10年ほど手の入らない空地となり、さながら埋め立て地の自然の植物遷移を見る実験場のようでした。そこに人の手で植えられたのは周りの松くらいで、後は風が種を運んだり、鳥が種を撒いたりしていろいろな植物が生えて来ました。多くはススキなどイネ科とカヤツリグサ科の植物が地面を覆いそこにクズなどがはびこり、低い水たまりの出来るような場所にはガマやヨシが生え、その周りにはヤシャブシが生えて来ました。それとともにいろいろな生物が入ってきて、キジやカイツブリなどもいました。トンボの仲間も豊富で、ハラビロトンボやマイコアカネなどもたくさんいましたし、準絶滅危惧種のネアカヨシヤンマやアオヤンマも見られました。 ギンイチモンジセセリ完成図 posted by (C)ドクターTその後の継続調査で年3回発生することが判りました。春型は4月中旬~下旬、夏型は7月中旬~8月初旬、そして3化が9月の初めに少数出ることが判りました。 ギンイチモンジセセリ─ススキ分布図 posted by (C)ドクターT蒲郡には大きな河川敷を持つ川がないので、河川敷に広いススキの生える荒地はありません。ラグーナ埋め立て地以外では西浦半島の東海岸沿いに少しそれらしいところがあるだけです。2014年に海洋学園の北の16ヘクタールある遊休地を県が44億円で買い取って、商業用施設を誘致するための土地整備を始めたために、10年がかりでせっかく出来た自然豊かな場所が木も草もない荒地に戻されてしまいました。従ってそこにはギンイチモンジセセリの棲む環境がなくなりました。現在はそことマリーナの間に少し残ったススキの原に細々と棲んでいる状況となりました。いずれはもっと開発が進むとそこにも棲めなくなるでしょう。

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