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2016/12/14(水)15:01

第二話─迷蝶ハンター誕生─

昆虫(2906)

迷蝶とはその土地に本来土着していない蝶のことで、たまたま遠くから飛んで来て、そこに食草があれば発生を繰り返すことはあるが、少なくとも20年以上発生が続かなければ定着種に格上げはされない。その意味ではまだクロマダラソテツシジミもツマムラサキマダラもヒメアサギマダラも迷蝶大図鑑に名を連ねている。またアオバセセリやキタテハは本土では普通種だが、八重山では迷蝶となる。だが、私に言わせればこんなものは迷蝶ではない。迷蝶と言うからには日本の他の地域で普通種であってはいけない。また何年も発生を繰り返していては迷蝶ではない。全く記録がない蝶あるいは記録があってもその後何年も見つかっていない蝶こそが迷蝶中の迷蝶だ。そんな迷蝶を求めて八重山通いが始まって3年目のことである。  Uさんが叫んだ。「あれっ、この蝶はおかしい!」その少し前にリュウキュウアサギマダラくらいの大きさだが、少し黒っぽくて違和感のある蝶を採り逃がしていた私は駆け寄った。  確かに先ほど一振りだけして採り逃がした蝶だった。この時になってUさんがルソン、ルソンと騒ぎ出した。その名前は迷蝶大図鑑で知ってはいました。確か記録はあるが、この何年か見つかっていない迷蝶で、迷蝶大図鑑の編者の菅原さんですらまだ採ったことがなく、ルソン島まで行っても採れなかったと言ういわく付きの迷蝶です。Uさんも写真に撮ったところで、「捕まえて!」と言います。Uさんは普段撮影だけで、採集はしていないのですが、この手の迷蝶は似たものが多くて、斑紋の違いは裏・表をじっくり見ないと同定が難しく、また確実な証拠を残すためにも採集するのが原則です。先ほど一度採り逃がしているだけに今度は慎重にネットインしました。迷蝶ハンター誕生の瞬間です。  Uさんとは北海道でリンゴシジミを探している時にたまたま知り合いとなりました。Uさんは昨年4月に石垣へ移住して迷蝶ハンターとなり、1年間で10種類あまりの迷蝶の撮影に成功していました。もちろんUさんにとっても、ルソンは初めての迷蝶で、その後迷蝶ハンターの集まる石垣の味処『岩』や与那国ホンダの西條さん宅でルソン採集の自慢話をしました。それがもう一人の迷蝶ハンターAさんを刺激したようです。 ルソンが石垣と西表でAさんにより採集されたと新聞に載ったのはそれから1か月ほど後のことでした。

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