私はフリーランスの監察医としても活動していて、月に10件ほどの検案をしています。蒲郡、碧南、半田、知多、岡崎、常滑などの警察署から検案依頼があると行ける時ならばいつでも24時間対応で出張検案をしています。行くと外表検査と髄液の性状、血液の心筋トロポニンT定性検査などで死因を推定、死体現象から死亡時刻を推定し、人定と場所は警察から訊き、その場で検案書を作成し、遺族がいる場合は検案結果を説明し帰って来ます。
外表検査と簡単な検査だけでは死因が推定出来ない場合が多く、東京都では死因が判らないと犯罪死でなくても、監察医務院へ運んで行政解剖が行われることがありますが、愛知県ではその設備も人員も足りませんのでほとんど行われません。最近死後の画像診断(AI=Auotpsy Imaging診断)を警察が積極的にするようになりました。解剖をしなくても死後のCTを撮ることにより約3割くらいは死因の推定が可能になると言われています。でも愛知県では丹羽郡大口町にあるさくら総合病院しか診断までしてくれるAIを撮ってくれる施設がありません。蒲郡市民病院では死後のCTは撮ってくれますが、読影まではしてくれません。私は外科医ですが、 CTの読影、胃透視、注腸透視、胃カメラから術中迅速病理診断まで自分で出来るように訓練していましたので、時々蒲郡警察署から市民病院で死後のCTを撮るが、その読影と検案をしてくれないかとの依頼が入ることがあります。
先日あった事例ですが、50歳代の一人暮らしの男性が風呂で入浴中に急死していた事例です。溺水の所見はありましたが、風呂で何もなくて溺れることはありません。溺水にいたる前に意識を失うような内因性疾患の発症があったはずで、それが真の死因となります。でその時に撮った死後のCTを診ますと後頭部、小脳周囲に血液の貯留を認め、クモ膜下出血と診断しました。CTを撮らなければ不詳の内因死で処理されていた事例です。