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2018/05/21(月)22:27

監察医ドクターTの事件簿6─てんかんで突然死する理由

監察医(67)

昨夜の検案での話、現場のアパートへ到着するとまず若手の刑事さんが状況を説明してくれます。66歳の男性が家で死んでいました。朝奥さんが仕事に9時ごろ出かけますが、テレビを見ていました。夜8時頃に奥さんが帰って来ると鍵がかかっており、呼んでも返事がありません。大家さんに合鍵で開けてもらって入ると、テレビの前で座った状態で前のめりになって亡くなっていました。外傷はなく、硬直や直腸温や死斑の状態から午後3時ごろの死亡と推定されました。眼瞼結膜や口腔粘膜に溢血点が見られ、窒息死の所見があります。100kgは超えているかという肥満の方でした。いつものように心臓血と髄液を採って調べます。心臓血のトロポニンT定性検査は陰性、髄液は清明でした。そこで、既往歴・通院歴、服薬の有無を訊きます。服薬は処方された薬の説明書がありましたので、すぐに判りました。降圧剤、痛風の薬以外にテグレトールが出ていました。と言うことはてんかんがあるはずだと、既往歴・通院歴を訊きます。奥さんから聞いてなかったのか慌てて奥さんに訊きに行きました。〇〇〇更生病院の脳神経外科にかかっていて、16年前に脳内出血で2度の手術をしていることが判りました。直接奥さんにてんかんはありませんでしたか?と尋ねると、脳内出血で手術してから時々てんかんの発作があったことが判りました。 ​さて、私が出した結論はと言うと、てんかんによる窒息死という病死です。死因の種類の欄には外因死にも窒息がありますが、この場合てんかんが窒息を起こす原因となったと考えられるので、死因の種類は病死です。てんかんで突然死する原因はいろいろあります。交通事故死、入浴中の溺死、熱傷死などもありますが、一番多いのは窒息死なのです。てんかんで意識消失した時に体位によっては気道閉塞を起こすことがあります。近くにいる人がすぐに気道確保してくれなければそのまま窒息死してしまうと言う訳です。うつ伏せ寝をしていててんかん発作を起こして窒息死したケースも2例ほど見ていますが、この方の場合は極度の肥満体で座ってやや前屈みになるだけで簡単に気道閉塞を起こしたと思われました。​

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