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2018/09/10(月)06:26

監察医ドクターTの事件簿16─ミッションインポッシブル

監察医(67)

ミッションインポシブル posted by ​(C)ドクターT トム・クルーズ主演のミッションインポッシブルを見て来ました。この映画のビルからビルへ飛び移るシーンの撮影中にスタントなしで行って足を骨折したとのことですが、私が注目したのはヘリコプターでの追撃シーンです。トム・クルーズが操縦したことのないヘリコプターを操って最後は体当たりでヘリコプター同士雪山に墜落しますが、それで死なないと言うのはまさしくインポシブルです。平成9年1月24日トヨタが契約していた日本フライングサービスの8人乗り込んだヘリコプターが三河湾上空で消息を絶ちました。当時私は蒲郡署の警察医になって2年目でした。1月25日午前8時45分、丁度西浦町であった検案を終えて市民病院に帰った時に遠望峰の辺りで墜落したヘリコプターが発見されたと言う一報が入りました。丁度救急車が現場へ行くと言うので、それに乗って私も現場へ行きました。三河湾スカイラインの桑ケ谷インターから入り、遠望峰に向かうと、スカイラインの南側にある峰の北斜面に落ちていました。かなり急な斜面を木につかまりながら登って行くとグシャグシャになった機体の周りに地獄絵図がありました。最初7人しか見つかりませんでしたが、機体の下から最後の1人が見つかりましたがいずれも見ただけで即死状態であるのは判りました。後でこの場所は岡崎市鉢池町であることが判り、本来検案をするのは岡崎署の管轄になるのですが、スカイラインの蒲郡側だったし、蒲郡署の安藤署長、消防署長も同行していましたので、蒲郡で検案をしようと言うことになりました。市民病院の林院長に連絡したら病院の伝染病病棟をかたずけてそこでやったらどうかと言いましたが、場所を知っている私はすぐにそこでは狭すぎるし、マスコミもたくさん駆け付けるだろうからもっと別の広い場所を探して下さいと頼みました。結局市役所北棟の会議室のテーブルに白い布をかけて、8人全部同時に検案しました。傷んだ遺体の修復には病院から何人か応援を頼みましたが検案書は私が全て書きました。死因の欄には全身多発外傷による即死と書きました。この経験があり、ヘリコプター事故ではまず助からないと言うことを知りました。その後起こった長野県高ボッチ高原への墜落事故、今年の北海道での自衛隊ヘリ墜落事故でも全員の死亡が確認されています。あり得ない活躍を描くから面白いのかも知れませんが、いくら雪山でクッションがあったにしても、ヘリコプター墜落で助かることはあり得ません。しかしトム・クルーズも年をとりましたね。 ​

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