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Anima-Town

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第15話 波動

人間は脳の容量の70%を使っていないと言われている
人間の持つ不思議な力はこの部分に秘められると言われている。
その使用されることのない脳の70%はこう呼ばれる・・・
『NIGHT HEAD』・・・・・・・



第15話「波動」


【STORY】

「御厨・・・ここを出たら二度と会わない」そう言って手を差し伸べる直人。
御厨を逃す為に協力する直人と直也は、三人の能力者と戦う覚悟を決め小屋を出た。
歩き始めながら御厨は語りだす。
「ただの点だ。人間はただの点に過ぎない。私は“人間”の事を考える。人間の事を考え、流れを良い方に導いていこうと考えていたんだが、私もその“点”にしかなりきれなかった・・・」
御厨にしては弱音にも聞こえる言葉だった。

その言葉を遮る様に攻撃が始まりだす。
直也に三人の思念が流れ込み、恐怖で脅えさせる攻撃が始まった。
「御厨さんを置いて行けば、僕達を見逃してやるって言っている・・・」
そして森の異常な雰囲気に飲み込まれる感じを覚える。
「とても強い力だよ・・・とても叶わない・・・」恐怖に脅える直也。
「そんなことはない。おまえ達がエネルギースポットの力を利用すれば、勝てる。」
そう言って御厨は先に進もうと導くのだが、自分勝手で強引な態度に直人は思わず御厨を突き飛ばしてしまう。
思わずその姿を見て言葉を失う二人。それでも御厨は二人に此処から脱出出来る様に懇願する。惨めな姿を露にする御厨を見て、今まで御厨に思っていた感情が失われていく様だった。
そして失われていくと同時に御厨に対して今までにない強い絆を感じていた。
御厨に手を差し伸べまた再び歩きだす直人と直也。歩きながら御厨は再び語りだす。

「・・・かつて時代は狂っていた。大きな戦争や飢餓。この世界はアンバランスに満ちていて、それが異常だと考える人は少なかった。
今だって、どう見ても人間はこの地球という惑星をうまく運営しているとは言いがたい・・・人間は他の生物と比べると、肉体の体質に対して脳の容量があまりにも大き過ぎる。人間はどんな天才でも脳を30%も使用していない。残り70%は一体何の為にある?・・・同じ脳でも違う働きをするのだろう。人類は別の星から移住してきたという説もある。だとしたら規格が地球環境に合わないのも当然だという事になる。またもしかしたら地球の環境が将来変化して、人類はいつか残り70%を使う日を迎えるのかもしれない」

そして御厨の話は核心に入った。

「おまえたちの力が、その部分に関係がある事は間違いない。岬老人は、私に翔子の存在も教えた。翔子はここに連れてくる必要はないといった。翔子の力は大きかった。肉体を失ってしまうほどに。意識の存在になって力を持っている者たちを助けるようになるだろうと言っていた。・・・もしも人間が70%の脳を使える様になったらどうなるんだろう・・・もしも肉体が支える事の出来る脳の容量の限界というのが、全体の30%だとしたら・・・」

「どうなるっていうんだ?」直人は思わず尋ねていた。

「肉体の破綻が起きる。どういうふうに起こるのか解らない。30%を越えた時点肉体はこの三次元にとどまるのが困難になっていくのかもしれない。」

「翔子のようにか?」

「おまえたちが望めばそうなる可能性がある。」

この話を聞いていた三人の能力者は力を貯めていた、そしてその力を放出する様に直人と直也に攻撃してきた。カミソリの様にすっぱり切られた傷口。兄のその姿を見て直也が三人の存在場所に力を集中させた。
力を放出した直也に岬老人の姿が現われる。そして直也と同調し、直人に告げた。
「壁を取り除け。心の壁を取り除け。在るがままの自分の力を受け入れろ・・・」
その言葉に応える様に直人が自らの力を放出した。その力は三人の能力者に正確に攻撃した。三人の姿は跡形も無く消えていく。三人の能力者は遠隔で力をコントロールして実体はなかったのだ。

助かった御厨は、警察庁に居る錦戸に会いに来ていた。それは、錦戸に預けていたものを返却してもらう為に。錦戸は研究所で何があったのか聞きたかったのだが、迷惑がかかると語る事を否定した御厨。そして
「日本を離れる。もう二度と戻る事はない。あなたにも会う事はないだろう」
そう言って立ち去っていくのだった。
御厨はその足で直人と直也に会い、預けていたものを渡した。それは、これから二人が生きて行く為に充分な金を引き出せるカードだった。
もう二人と二度と会う事はないだろう。その別れ際、直也は手を差し伸べ御厨の心を読もうとしたのだが、拒まれてしまった。直人は御厨との暗黙の別れを告げていた。

御厨と別れた二人。御厨の語られた言葉を思い出していた。
肉体の破綻・力が大きくなれば翔子の様に消えていく・・・やりきれない気持ちの直人。
そんな時、助手席に乗っていた直也の体に異変が生じた。
「兄さん・・・僕の体が消えていく・・・・」
直也の手が兄に差し伸べられる間もなく姿を消してしまったのだった────。




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