sinokの【私情まみれの映画考察】

2009/06/23(火)22:01

『ターミネーター4』

映画「た」行(25)

私はどちらかと言えば『ターミネーター3』に好意的な者です。 ジョンの顔が「白人って子供の頃は可愛くても大きくなると崩れちゃうのよね~」という偏見どおりなってしまったことと、サラが死んじゃってることを除けば(笑) (役者が変わったことはわかってますです) でもさすがに、4作目まで作ろうというのは、どうよ、と思ってました。 その私が大きく舵をきりまくってしまったのは、ジョン・コナーをクリスチャン・ベールが演じる、という報道が出たため。 クソ! 他の誰がやっても軽く流せる自信があったけど、クリスチャン・ベールがやるなら観なきゃいけないじゃないか~~~!!と、待った待ったよこの日まで! はっきり言って、この映画のジョン・コナーのドラマはさほど深くありません。 重要なのは今回初登場のマーカス、そしてまだ少年のカイル・リース! 出番もジョン・コナーと半々ってとこでしょうか。 ジョン・コナーのこれからに影響を与える出来事を描いて、かつ『1』におけるカイル・リースの性格を補完する役割が『4』なんだね、と捕らえれば腑に落ちるのですが、ジョン・コナー大活躍!を期待すると拍子抜けになります。 でもね。 そもそもジョン・コナーって、過去3作でも物語の中での重要度って、どのくらいよ? ええ~~~っ!?という向きもあろうかと思いますが。 ジョン・コナー=救世主って言われてて、それは『ターミネーター』シリーズに一本とおった大筋ではあるけど、彼自身が何をやったのか?と振り返れば、『1』では生まれてないし、『2』ではお子様だったし、『3』は無気力で放浪するフリーターだったわけですよ。 (テレビシリーズにいたっては思春期真っ只中の少年だ) 彼が「救世主」として大活躍するのはまだ描かれていない未来の話。 それも、カイル・リースを過去に送り込む時点がピークのようだから、とすれば今回の『4』ですら彼はまだ「救世主」ではないわけです。 『ターミネーター』とはぶっちゃけ、【ジョン・コナーを生かす物語】であって【ジョン・コナー「が」生き延びる】話ではないのですから、ジョン・コナーは主役であっても主語じゃない、非常に受動的な存在のように思います。 なんていうか・・・西遊記における三蔵法師というか・・・(重要なのは三蔵法師だが活躍するのは孫悟空、みたいなイメージ。違う?) で、何が言いたいのかというと。 そういう奇妙な立ち位置の役柄を、まあようも見事に演じるわけですよ、クリスチャン・ベールと言う人は。 この人、なりきり演技で有名ですが、なりきるのは「役」ではなくて、「世界」なんじゃないかと思います。 だって、どんなにトンデモ世界を描いた映画でも、しっくりなじんじゃうんですもの。 映画の中の世界がさも現実だと言わんばかりに。 『リベリオン』をみると、『マトリックス』のキアヌが単なるSF調かっこつけ男に見えてくる。(私の中では『マトリックス』より『リベリオン』の方が上だ。その判定基準は説明が難しいけど・・・) 怪しい未来とか、崩壊した世界とか、極限状態とか、狂気の沙汰とか、常識外の世界がこれほど似合う、しかも二枚目だという役者も珍しいと思います。 クリスチャン・ベールは年とったら、おそらくエド・ハリスやモーガン・フリーマンのような神様系俳優になるでしょう。 あ、だからやっぱり、彼がジョン・コナーでいいんだ。 だってジョン・コナーは救世主、限りなく神がかってるわけだし(笑) ジョン・コナーの話ばかりしていますが、映像もすごかった。 CGだらけかと思いきや、ターミネーター軍団はちゃんと作って動かしたというからエライ。 あとは遠景とかね、風景の殺伐とした感じが『セブン』を彷彿させるような色味で、荒廃した未来の香りが芬々とします。 だから、絵からまず「審判の日」の後なんだ~と、強く感じられてそれがとても嬉しかった。 CGで何を作るかじゃなくてね、絵や色や構図で見せてくれるから。 あ、ただCGなんだろうとは思うんですけど、冒頭でのヘリ落下シーン。 1ショットなのにあのありえね~~~!な動き。 CGなんだろうとは思うんですが、ものすごく驚いた。 いったいどうやったらあんな映像撮れるんだ? 『ベオウルフ』の対ドラゴンの映像をめちゃめちゃ進化させたような感じでした。 驚きの余り劇場で椅子をガタガタさせた私を許してください。 ということで、本人も想像以上に冷静に観た『ターミネーター4』でした。 でもちゃんと旧作ファンの心をくすぐるところも押さえてくれてるのが嬉しい。 そして私は、2時間ずっと、カイルはマイケル・ビーンに脳内変換されてました。 うんうん、あなたはあと何年かしたら、マイケル・ビーンになるんだね! そして何より懐かしいサラの声! 結局のところ、私にとっての『ターミネーター』とは、シュワちゃんでもジョンでもなく、サラとカイルの物語につきるような気がします。

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