スティックを持って上京②
こうして、生死をかけた麻雀が始まった。 たつろう、19才の冬である。 ■生死をかけた麻雀 麻雀のメンバーは、対面が学生風でもかなりやりなれてるって感じ、上家がきれいな模様の人、下家はうさんくさいおじさん。 場所決め(麻雀卓の座る位置。これでゲームの流れがそうとう変わる時もある)がおわり、親もきまり、第一投めのサイコロがふられた洗牌の音が腹に響く。もう何日か飯らしきものを口にしてない。しかも、もしこのゲームで負けると、間違いなく良くて半殺し、悪くて殺されるかもしれない。そういう気持ちと混ざり合って吐き気がしてくる。 「負ける‥‥」 この3文字を心に描いた時、勝負は目に見えていた(ゲームの内容も覚えていますが省略します)。 坂道をころがるように負け続けた。 「もうだめだぁ」 最後の1局になってしまった最後のサイコロが振られ最後の配牌だ。 なにかが違う。いままでと明らかに配牌が明るい。 「もう最後だ」 と思った瞬間なにかがふっきれた。 「そうだこの配牌で考えられる最高の役を狙おう」 そしてゲームは終盤にはいり、最高の役ができあがった。 それは‥‥、緑一色、四暗子単騎、トリプル役満だ。四ソウ単騎待ち。 胸は高鳴り汗が額から流れ落ちる。そして最後のツモが回ってきた。 ハイテイヅモだ。汗ばんだ指で運命の牌をにぎり、力いっぱい盲牌する。 盲牌をやりなれた右手の親指は、その感触を間違えるはずがなかった。 「四ソウだ!!」 おもいっきり麻雀卓にたたきつけた! 「つも!!」 ゆっくり完成された手牌をたおし、 「緑一色、四暗子単騎」 少々うわずった声で宣言すると一瞬真空状態のように音がなくなり、対面の学生は「すげー!」の一言。 雀荘では、他人同士でやる場合、勝ち逃げ。これ基本! ←でも、そうとううらまれる(笑) しかし、かなり負けていたため、手元にのこったのは1万5千円。 この話は昭和での出来事、今の感覚とはかなり違う つづく