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作品番号2番
「雪舟庭」 その三 そもそも、絵のわからない私に、庭のことなどわかるはずがない。 本堂のそばに参拝客の一群があり、女性ガイドが庭園の説明をしていた。 やや肥満ぎみのガイドだった。 四十過ぎか五十を超えているか。 女性の年齢を当てるのは、私は昔から苦手だ。 「この庭園の様式は、枯山水を用いた池泉回遊式庭園と申します。寺に面する南側以外の三方を林地で囲んだ小谷地に築造され、前に心字池、東北には枯滝がそれぞれ設けられております」 ガイドの言葉には、少し関西アクセントがあった。 私は庭園の説明を聞くために、参拝客の一群に近寄った。 「正面の石組みは三山五獄になぞらえております。雪舟が明の国から得た構図といわれております」 私と違ってガイドはよく勉強していた。石の配置一つにも深い意味があることを流暢に説明していく。 「庭石の配置は五行石の様式にしたがっておりまして、霊象石、心体石、体胴石、寄脚石、枝形石と、二つから三つ、あるいは五つの石を巧みに組み合わせて置かれております。あちらをご覧下さい」 ガイドが池のそばにある石組みを示した。 私が先ほどから気にしていた石である。 ちょうど握り飯のような形をしていて、その裾をつつじの植込みが覆っている。 私はいやな予感がした。 (つづく) (雪舟「秋冬山水図(冬景図)」) にほんブログ村 【PR】----------------------------------------------- 【送料無料】 聖書 聖書協会共同訳 引照・注付き SIO43 / 日本聖書協会 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2020.02.15 04:00:06
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