2006/07/05(水)07:37
♪Movie♪『花よりもなほ』
さァさァ、皆様お立ち会い。
時は元禄15年。
赤穂浪士の討ち入りの、しばらく前の物語。
天下泰平江戸の街。
貧乏長屋の一角に、敵(かたき)討たんと暮らしたる、若待がおりました。
されども剣はからきしで、楽しき長屋の面々と、日々と季節の移ろいを、共に過ごして早三年(みとせ)。
ここで会うたが百年目、敵(かたき)を討たば百両の、金子(きんす)も入り、顔も立ち、晴れて故郷に帰れると、思えど肚が座らぬに、敵(かたき)の家族垣間見て、さらに心は揺れ動く。
さてもこの世はままならず、義理と人情板挟み。
長屋仲間に助けられ、
さァてさてさて、この仇討ち、いったいいかなる仕儀と相なりますやら。
お代は1800円だよゥ。
ヨッ、学生さんはまけとくよ。
レディースデーも割引だ。
さァさ、入った、入った。
-----
ま、映画の日なので、千円で観ましたけど。
-----
まずは、音楽の軽快な感じが、時代劇らしくなくて良かったです。
別ベクトルですけど、ジプシーキングスかよ、的な新鮮さ。
-----
で、何より役者陣が贅沢極まりない、というか、本当に上手くて、見飽きません。
主人公の岡田さんは、本当、綺麗な顔立ちで、芝居もしっかりしていて、特に逃げ出すシーンなんて絶品。
宮沢りえさんは、本当、いい仕事をされますね。
賑やかしい出演陣の中、しっとりと示される存在感。
で、古田新太さんに、香川照之さんでしょ。
寺島進さんに、石橋蓮司さん、そして、浅野忠信さん。
田畑智子さんの一生懸命な町娘姿も素敵ですし、お笑いトリオの上島竜兵さん・千原靖史さん・木村裕一さん達は、あれ?こんなに芝居上手かったんだ、という芸達者ぶり。
子役達の演技も嫌味がなく、自然体な感じ。
見応えアリ、でした。
-----
それに全体に流れる現代劇的な空気感も心地良い。
本当、肩肘の張らない「痛快娯楽時代劇」。
何と言うか、山本周五郎先生の滑稽譚に通じる味わいがあります。
つまり、最高に痛快で面白い、ということ。
-----
そして一方で、池宮彰一郎先生のパロディでもあるのですね。
浪人役の香川さんが、勢い込んで、「義とは、「我」を「美」しくと書きます!」というセリフを吐きますが、池宮先生のエッセイのタイトルは、ズバリ『義、我を美しく』だったりします。
ラスト、寺坂役の寺島さんは、自分の「密命を思い出す」訳ですが、このネタは『四十七人目の浪士』に詳しい。
え…?両方とも絶版?うわぁ。名作なのに。
代わりに『四十七人の刺客』で
-----
私も意外と(?)時代劇映画は観てますけど、本当に良い意味で観たことのない、そして、こういう時代劇なら何作も観たい、と思わせてくれる、傑作映画でした。
うん。
この上半期に観た映画の中では、『かもめ食堂』『博士の愛した数式』と並んで好きな映画だわ。
=====
『花よりもなほ』
2005年 松竹 127分
http://www.kore-eda.com/hana/
監督:是枝裕和
出演:岡田准一 / 宮沢りえ / 古田新太 / 田畑智子 / 浅野忠信 / 香川照之 / 石橋蓮司 / 寺島進 / 上島竜兵 / 木村祐一 / 千原靖史 他
★★★★★