2007/11/16(金)12:29
小宮山宏総長式辞@安田講堂
現在、東京大学の総長をされている、小宮山宏先生の授業を、学生時代に聞いたことがあります。
所属する環境サークルが主催する、学際授業の一環で、
文系学生だった私も、そのお話をお伺いしたのです。
内容について語ると、それだけで長くなってしまうので、割愛しますが、
「科学に出来ること」の可能性を示し、学生を鼓舞激励する授業は、
とてもアツく、心を打たれました。
『エコブームを問う!東大生と学ぶ環境学』
(私が聞いた年次と、内容は違いますが、
総長の環境問題に対するアツいメッセージに触れることができます。)
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総長就任後のご活躍は、アイデアに満ち満ちていて、精力的で、ロジカルで、
折に触れ、新聞などで拝見しては、尊敬の念を新たにしていたのですが、
今回、肉声をお伺いする機会に恵まれたのは僥倖でした。
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東京大学は、明治10年に設立され、爾来、130年の歴史の中で、卒業生は25万人を数えます。
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この中には、夏目漱石、正岡子規、内田百聞(門に月)、芥川龍之介、
大宰治、川端康成、三島由紀夫なんて「文豪」を始め、
森鴎外や岡倉天心、嘉納治五郎、伊東忠太といった異才・鬼才、
山田風太郎、澁澤龍彦、星新一、ムツゴロウなんて「人気作家」、
立花隆、茂木健一郎、橋本治、小森健太朗といった「現役作家」
寺田寅彦、鈴木梅太郎、中谷宇吉郎をはじめとする理系の天才たち、
加藤高明を筆頭として、中曽根康弘や宮澤喜一などの首相、
加藤登紀子や小沢健二などのミュージシャンも含まれています(敬称略)
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創立130周年記念式典の式辞として頂戴した、総長のスピーチは、
「今の時代」を見つめ、「次の時代」を見据える、力強く、素晴らしい内容でした。
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総長は、今の時代を、創設期、戦後復興期に続く、第三の創業期だ、と指摘します。
この第三の創業期を迎えて、大学の「あるべき姿」を常に問い直す姿勢が必要であり、
歴史と伝統の上に、「続ける自覚」と「変える勇気」を持たなければならないのだ、と。
目指す先に、模倣すべき手本はない。自ら切り拓いて行かねばならないのだ、と。
その目指すところとは、「知の頂点」であり、「社会への貢献」の達成。
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130周年記念事業として、幅広い分野での学問の交流、多様な国際会議の開催、
学生国際交流サミット、海外留学生受け入れ支援策実施、奨学金制度の充実、
学問を、そして人生を、くつろいで語りあえる場の提供としての「知のプロムナード」整備、等々
具体的で、実際的なアイデアが、今、次々と実行に移されています。
『学問の扉』
例えば、『学問の扉』出版も、この一環。
各分野のトップランナー達が、最先端の知を、惜しげもなく、分かりやすく披露しています。
『知の技法』のその先へ。東大は今、動き出しています。
『新・知の技法』
:東京大学130周年記念事業公式HP→こちら
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総長が見据えているのは、「世界」。
日本の「知」のレベルは、決して低くありません。
それどころか、トップランナー達は、世界の最先端の先を走っています。
それにも関わらず、日本のポテンシャリティに比して、
国際的な評価は低い、総長はそう見てられるのでしょう。
総長の発破は、単に、「東大」に対して仕掛けられているものではありません。
日本全体の「知」のレベルを引き上げ、強化し、プレゼンしていく、その矢面に立つ覚悟と、
そのために、惜しげもなく、衆知を結集し、アイデアと労力を捧げる決意を表した、総長としての宣言であり、
「学閥」や「専門」の壁を越えて、「知」で世界中に貢献していく、研究者としての真摯さの表明なのです。
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壮大で 力強く 美しい 「夢」と「目標」を描き、示すことが出来る、この総長のもと、
教授陣が、学生が、スタッフが、「知」の世界を、我々の日常を、どう塗り変え、どう彩るのか、
その「知」が、世界に、どんな未来を紡ぐのか。
遠くからではありますが、楽しみに見守っていきたいと思います。