カテゴリ:環境
アメリカ・日本・中国の未来
===== 壇上に参加していた学生お二人の質問に、パネリストの方々から回答がありました。 アメリカが環境問題のリーダーを担っていこうとしている理由、 日本や中国の今後について、という質問でした。 ===== 住氏からは、アメリカの政策が変わってきた理由として、 アメリカで、カーボンフリー(CO2を排出しない)技術について 実行可能性が見えてきたことがある、との話がありました。 また、日本については、税制を通じた、富の配分システムが硬直化しており、 制度設計として、国民の意思が入らないシステムになってしまっている、と。 ===== 未吉氏からは、環境情報が商品情報に付加されるようになれば面白い、という話がありました。 テスコ(イギリスのスーパーマーケット)は、環境情報の付加を行うようにしているそうです。 今後は、投資判断基準にCO2排出量が入ってくるようになる可能性もある。 何故なら、地球のサステイナビリティに貢献しているかどうかが、企業への評価基準になる可能性があり、 そうなると、企業自体のサステイナビリティに関わるので、企業活動にインセンティブを与えることになる。 というのも面白いお話でした。 また、現在の企業に対する情報開示義務は、会計情報が中心ですが、 CO2排出情報も義務化する流れがあるそうです。 ----- いや、企業側の立場で言えば、それを表示するための負担って、 ものすごいコストになるという気がしますけど…。 うーん。 でも、納入を受ける側の大企業が、請けの会社に表示を義務化すれば、受けざるを得んわな。 大企業側は、その合計と自分のところでの負荷を付加して、商品に明示するわけで、 つまり、原価計算的なCO2計算処理が必要になってくるわけですね。 でも、これが各産業で達成されれば、LCA(ライフサイクルアセスメント)把握も容易になる、か。 学生時代なら、諸手を挙げて賛成、なんですけどね(苦笑) ----- また、環境問題について、アメリカでは、エネルギー確保の問題としてだけではなく、 世界経済に対する波乱要因として考えられている、という指摘もありました。 このまま、各国で環境の悪化が進めば、「環境難民」がアメリカに流入する可能性もあり、 それを恐れている、というお話。 2010年には、環境問題への取り組みについて、アメリカが台頭し、 中国が環境運動の中心となるだろう、とも。 ----- 中国の現状を、日本の環境問題史に引き付けて言えば、 政策の重点が「経済発展」におかれ、「公害問題」が身近にあるフェーズで、 「地球環境問題」に軸足が置かれるのは、もう少し先の話。 まずは「経済発展の恩恵を受ける政治・富裕層+それに生活を依存せざるを得ない貧困層」と、 「公害問題の被害を受ける民衆層+問題の本質を理解する知識層」の乖離が進んでいくことでしょう。 一党独裁型の政治形態と、民衆運動が、どういう形でぶつかり合い、決着をつけていくのか、 そこまでは想像できませんが、地元の経済主体との衝突を避けるため、「公害」ではなく、 「地球環境問題」を旗印にする民衆運動も力を得ていく、という所までは見えます。 ----- 「北京オリンピック」「上海万博」が、環境問題に意識を強く向ける、 何らかのきっかけになれば良いのですが…。 「経済大国」が「環境先進国」としての範を示すことは、その一助です。 ----- 何度かこのblogでも言及していますが、21世紀の日本は、 「環境立国」「文化立国」「観光立国」として生きていかざるを得ない。 アメリカが現大統領政権下で、「環境」についてもたついている間に、 ヨーロッパとの関係を強化し、アジアの環境面でのリーダーとして発言し、 日本としての立場をはっきりさせるべきだったのです。 アメリカの現大統領は、世界的にみてもマイナス評価の高い人物だけに、 逆に言えば、環境面で、あの大国を出し抜いて、国際的な主導権を握り、 国家としての評価を高めるチャンスだったとも言えます。 それを…。 例えば、アメリカを京都議定書の枠組に引き戻すことが出来ていたなら、 「給油で評価されていた」以上の喝采を、世界から浴びていたことでしょう。 アメリカが枠組内にいないのを良いことに、 国内でのCO2排出を求められた以上に削減し、 国際的評価を高める、という手もありました。 しかし、達成すべき-6%ははるかに遠く、実質は+8%。 ----- まぁ、済んだことは仕方ありますまい。 世界にとって喜ばしいことに、もうすぐアメリカのあの政権もおさらばですし、 (前回の中間選挙で、落ちていてくれれば、なお良かったのですが。) 日本の政権も変わり、バランスの取れた幅の広い配慮が出来るようになりました。 ----- 環境問題についても、日本が世界に範を示せるよう、 -民間レベルでは既に高く達成されているのです- 日本の「経験」を、きちんと他国に伝え、同じ轍を避けられるよう、 発信力をつけ、リーダーシップを担える国家へと変わっていきたいものです。 ===== 環境シンポジウム ~いちばん身近な環境サミット~ 【日時】2007.11/10 【場所】東京大学本郷キャンパス 【パネリスト】 飯田 哲也 氏 (環境エネルギー政策研究所 所長) 末吉 竹二郎 氏 (国連環境計画 金融イニシアチブ特別顧問) 住 明正 氏 (東京大学 サステイナビリティ学 連携研究機関統括ディレクター) 瀧口 博明 氏 (環境省大臣官房) 石川さん、渡辺さん (東京大学学生) 【主催】東京ドリームネット お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 21, 2007 12:10:33 AM
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